裏方にとっても広島の25年ぶりのリーグ優勝は格別の瞬間だった。6月から選手の用具一式を運搬するドライバーとなった前洋央さん(34)は「たまたまですが、こういう瞬間に立ち会えたのはうれしい」と表情を緩ませた。
荷物を満載にした6トントラックのハンドルを握るという仕事だが、その業務は過酷だ。広島でのナイターが終わりマツダスタジアムを出発するのが午後11時頃。たとえば翌日に東京ドームで試合がある場合は、午前9時には選手が宿泊するホテルに荷物を届けていないとならない。
「到着はギリギリですね。時間に追われるのが大変です」と苦労を話してくれた。トイレ休憩のために数回サービスエリアで止まることはあるが、真夜中の高速道路を約800キロ走り続けないといけない。
交流戦では6月5日にソフトバンク戦(マツダ)を終えると7日には北海道の旭川で日本ハムとの試合。広島から東京、青森、函館とフェリーも利用しながら荷物を届けた。
「叔父が作り上げてきた信頼関係を壊すわけにはいかない」。前任は40年間ドライバー一筋だった叔父の前真澄さん(65)。元広島監督の山本浩二氏ら選手やスタッフから愛されてきた。
選手やスタッフと比べて陰に隠れた存在ではあるが、32年ぶりの日本一へチームとともに走り続けている。(玉木充)