本拠地での今季最終戦を終え、場内を一周する中日・井上一樹監督。打線を強化し、長い低迷から抜け出せるか 2026年に球団創設90周年を迎える中日。来季はこれまでと違う新たな環境での戦いが待っている。
本拠地バンテリンドームが改修され、外野エリアに新たな観客席「ホームランウイング」と「アリーナシート」を設置。それに伴い右中間、左中間フェンスの本塁からの距離は従来の116メートルから110メートルへ、6メートル前にせり出す形になり、外野フェンスの高さは1・2メートルも低くなる。これまでより本塁打が出やすい球場に変貌を遂げることになる。井上一樹監督(53)は球場改修により来季の選手のプレーに影響が出る可能性について言及した。
「確実に野球が変わってきます。ことしの感覚で例えれば、相手打者にバーンと芯を食った打球が出ても『ああ、バンテリンドームだったからよかった』というシーンはいっぱいあった。逆にウチの選手(打者)だって『うわあ、他の球場だったらホームランだったのに』ということもありますし、これはもう、ある意味〝いってこい〟(プラスマイナスゼロ)」
影響はもちろん、心理面も及んでくる。狭くなるからといって、気持ちまで縮こまってしまっては困ると、言葉に力を込める。
「投手はすごく繊細に感じてしまうと投球がちっちゃくなってしまう可能性もありますんで。そこをどういった形で『球場に合わせた投球術』というようなことを(できるか)。ホームゲームですからね。シーズンの半分はそこでやるわけですから。もうちょっと気迫というか、気持ちというところも、みんなに持ってもらわなきゃいけないのかなと思います」
外野フェンス前に特別に設置した〝柵〟の有無によって、野球が大きく変わるのは過去の他球場の例も物語っている。
ソフトバンクの本拠地みずほペイペイドームは2015年シーズン(当時の名称はヤフオクドーム)から右中間と左中間のフェンスの前に柵を設けて新観客席「ホームランテラス」を設置。それに伴って右中間、左中間フェンスまでの距離がおよそ8メートルから10メートル短縮された結果、設置初年度はホークス打撃陣の同球場での本塁打は前年の46本から86本へと大幅に増加した。一方で投手陣は同球場での被本塁打を前年の45本から増減なしにとどめ、チームの2年連続日本一につなげた。
阪神の本拠地、甲子園球場は1991年シーズン終了後に「ラッキーゾーン」を撤去。両翼は5メートル広がり、右中間、左中間の最深部は約11・5メートルも後退するなど球場の様相が激変した。迎えた92年シーズンは阪神投手陣の甲子園での被本塁打は前年の71本から36本に減少。シーズンを通したチーム防御率は前年リーグ最下位の4・37から同トップの2・90と飛躍的に向上した。
一方で、阪神打撃陣の甲子園での本塁打は前年の54本から22本に激減。それでも守備力を重視した選手起用など変化に対応し、チーム成績は前年の最下位から巨人と同率の2位に躍進した。
今季4位と5年連続Bクラスに終わった中日としては、大きく生まれ変わる球場を力に変えたい。
今季のチーム得点は6年連続リーグ最少の403。チーム本塁打はリーグ5位の83本で、うちバンテリンドームでのアーチは半分以下の35本だった。井上監督も「またちょっと打撃も変わってくると思う。どういった打撃をすれば得点になるのかとか、今までの球場と違った感じのイメージを持ってということを考えれば、植え付ける部分はいっぱい出てくると思います」と思い描く。
とはいえチームが球場の変化にすぐに適応できるかは不透明だ。中日自身の過去を振り返ると、ナゴヤ球場からナゴヤドーム(現バンテリンドーム)に本拠地を移転して1年目の1997年は守備力重視の野球への切り替えに手間取り、前年の2位から5年ぶりの最下位へと順位を落とした。同オフに大型トレードを行うなど陣容を整え99年の11年ぶりのリーグ優勝につなげている。
井上竜が改修されたバンテリンドームを「庭」にできるかは、大型補強などによるチームの生まれ変わりも必要となりそうだ。(上阪正人)