2024年11月の秋季キャンプで佐藤輝(右)に声をかける小谷野コーチ 史上最速優勝を成し遂げた、今季の阪神の舞台裏を探る連載「球児トラ界隈」。第12回は、選手時代も含めて初のセ・リーグに挑戦した小谷野栄一打撃チーフコーチ(44)が登場。選手の自主性を尊重しながら、強力クリーンアップの躍動をサポートした。
勝負強さを発揮し、リーグトップのチーム474得点を挙げている虎打線。今季から就任した小谷野打撃チーフコーチが、指導らしい指導をしないやり方で支えてきた。
「やり続けている選手たちに自分たちから改めて言うと、すごく押しつけられたような重圧になる。よりシンプルな言葉を選んで『そういった技術を持てると、もっと打席を多く与えられる選手になると思うよ』という言い方しかしていないです」
選手の自主性を尊重するのが小谷野流。その根底にあるのが、日本ハム、オリックスの両球団の恩師、オリックス・福良淳一GMの教えだ。「(福良GMは)『一年間同じことを継続してみよう』とそれしか言われなくて、絶対に変な動きが出ていても我慢してくださった」。やさしく見守ってくれたことで、自身は2010年に打点王を獲得するスラッガーにまで成長した。
今季の虎打線は4番・佐藤輝を中心としたクリーンアップが引っ張ってきた。佐藤輝はここまで38本塁打、96打点の2冠。3番・森下はともにキャリアハイの23本塁打、88打点。5番・大山はリーグトップの67四球。そして、打点ランキングは佐藤輝、森下、大山の順でトップ3を独占している。
佐藤輝と昨秋の安芸キャンプで初対面した小谷野コーチは「野球に対する姿勢は素晴らしい選手だなと感じましたし、賢い選手だなと思いました」とその才能をすぐさま見抜いた。
「シーズンを通してもちゃんとした準備をしてくれた。彼のスケールからしたらまだまだ伸びしろがあるからこそ、恐ろしい選手だなとは思います」
今季、3番・佐藤輝、4番・森下、5番・大山でスタートしたクリーンアップだが、藤川監督が4月15日に「4番・佐藤輝」を決断。3番と4番を入れ替えたのが、ターニングポイントのひとつになった。
「結果として彼らの良さが引き出せた」と小谷野コーチ。今後も〝指導しない指導〟で若手の才能を引き出していく。(渡辺洋次)