阪神を走攻守で引っ張り、2年ぶりのリーグ優勝へと導いた中野拓夢内野手(29)は遊撃から二塁にコンバートされて丸3年。「二塁を守るようになってよかった」としみじみと振り返った。
「最初のころに比べたらバッターの特徴や反応を見て、余裕をもって守れる」
中野といえば、身体能力を生かして二塁後方にフラフラと舞い上がった打球を背走しながらスライディングキャッチするなど、投手を助けた多くのシーンが印象に残っている。「予測をして動いたり、投手の投げるコースや球種で、こっちに詰まった打球が飛んでくるかなとか…。データをもとにフライに追いついたこともありましたよ」。どうしても華麗な身のこなしばかりが注目されるが、頭脳を駆使してのファインプレーもあったと胸を張った。
2021年にドラフト6位で入団。遊撃のレギュラーの座をつかんだが、2年目はリーグ最多の18失策。送球エラーが多かった。18年ぶりに阪神に復帰した岡田監督(現オーナー付顧問)は「投げるのを気にしながら守っている。負担が軽くなればバッティングもよくなる」と二塁コンバートを指示。その効果はてきめんだった。
転向1年目の23年は打撃部門で初となる最多安打のタイトル。守備でも広島・菊池を上回る票を獲得し、二塁手のゴールデングラブ賞を受賞した。
「セカンドの場合はとることに集中できる。ショートだったら守りの考える部分が多い。打撃にも少なからずいい影響を与えていると思う」
昨年は長打を増やす狙いでスイングを大きくしたのが失敗。もとのコンパクトに振る形を意識して、打率・287はリーグ3位(20日現在)。守備が安定したことの相乗効果が打撃にも表れた。
現役時代の04年、鳥谷敬の入団により、遊撃から二塁にコンバートされた経験を持つ藤本総合コーチは「僕は試合に出るため。中野とは(事情が)違うけど。(コンバートは)よかったと思いますよ」。さらに自らの経験談をもとに解説してくれた。
「1年ではわからない。3年やれば、感覚や嗅覚、ポジショニングとかもわかって、自分のリズムができる。それがバッティングにも生きている」
「石の上にも3年」という言葉がある。今も遊撃ならどうなっていたかはわからないが、コンバートの大きな成功例として、中野は虎だけでなく球界で語り継がれるだろう。(三木建次)