史上最速優勝を成し遂げた、今季の阪神の舞台裏を探る連載「球児トラ界隈」。第7回は、リリーフ陣の柱となり連続試合無失点を世界記録まで伸ばした石井大智投手(27)を取り上げる。6月には打球を頭部に受けて約1カ月離脱。虎党も心配したが、実は5月中旬にもコンディション不良を抱えていた。ブルペン担当の金村曉投手コーチ(53)が「今だから…」と明かした。
連続試合無失点の世界記録を「48」まで更新し続けている石井だが、決して順風満帆なシーズンではなかった。7日の優勝決定後の会見でも、藤川監督への感謝の思いを打ち明けていた。
「(藤川)監督のアドバイスだったり管理がなければ、30試合いかないぐらいで今シーズンは終わったかなと」
6月6日のオリックス戦(甲子園)で頭部に打球が直撃。マウンドに倒れ込み救急搬送された。選手生命どころか命の危機ですらあったが、約1カ月で復帰して見事に無失点記録を継続させた。このとき石井が振り返ったのは、その復活への課程の話ではない。ブルペン担当の金村投手コーチが真相を明かす。
「4月も体調不良で1軍登録を外したけど。少し連投が続いた5月中旬ですね。体全体に疲れが出てきていると感じて。そこから監督と話をして『上がり』を定期的に作ろう、となった」
出場選手登録が可能な人数は31人で、そこからベンチ入りできるのは26人。残りの5人は「上がり」と呼ばれ、主に登板しない先発投手が占める。救援投手、それも救援陣の柱となりつつあった石井を「上がり」とするのは、異例だった。
金村コーチは「投げない日でもブルペンにいるだけで疲れるし、何が起こるかわからないから。『上がり』なら早く家に帰れるし、精神的にもリフレッシュできる」と説明。さらに「今だから…の話だけど。あの(頭部直撃の)アクシデントも、石井にとっていい意味の(肩肘の)休養になった」と付け加えた。
藤川監督は日米通算245セーブをマークした球界を代表するクローザー。2007年には10連投も経験した。誰よりも救援投手の過酷な〝労働環境〟は理解している。石井の今季の3連投は4月(14~16日)の一度だけ。目先の勝ちよりもコンディションを優先させた結果が、大記録へとつながった。
4月5日の巨人戦(東京ドーム)からの連続無失点記録は「48試合」に伸びている。連続イニング無失点も「47」まで伸ばし、藤川監督が持つ球団記録まで「あと⅔回」に迫るが、リーグ制覇翌日の8日、岩崎とともに出場選手登録を外れた。
「本人も記録にはこだわっていないみたいで(笑)。クライマックスシリーズ、日本シリーズに向けての休養です」と金村コーチ。今回は体調も万全だ。
石井は「僕は記録はどうでもいい」が口ぐせ。2年ぶりの日本一へ、心技体すべて万全の状態で1軍の舞台に戻ってくる。(三木建次)