史上最速優勝を成し遂げた、今季の阪神の舞台裏を探る新連載「球児トラ界隈」。第1回は、選手会長の中野拓夢内野手(29)が登場だ。シーズン前には自身の夫人も交えて藤川球児監督(45)と会食。首脳陣と選手間の橋渡し役を見事に担い、「野手会」の開催にも奔走した。球児虎の〝職場環境〟を整えたのは、間違いなくこの男だった。
★結束固めるべく野手会開催
圧倒的な力で勝ち取った2年ぶりのセ・リーグ制覇。その要因は何か-。選手会長としてチームを引っ張った中野の言葉からは、選手間、そして首脳陣との風通しのよさがうかがえた。
「投手会は(開催していると)すごく耳にしていたので、いつか野手も一つになることが必要かなとは思っていた。もう一回、優勝に向けてのスイッチを入れ直す意味で、まずは野手から一つになろうと考えていました」
8月4日、名古屋入りした野手陣は九州料理店を貸し切って「野手会」を開催した。予定を合わせやすい投手陣と違い、野手が顔をそろえることはなかなか難しい。ただ、東京からの移動日という好タイミングも重なって念願がかなった。
たわいない話を中心としたざっくばらんな食事会。それでも、同じ釜の飯を食うことで、優勝への思いをより結束させることができた。参加メンバーで最年少だった中川は「本当にいい時間を過ごせました」と振り返る。
★シーズン前に夫人交え監督と会食
首脳陣との風通しもそうだ。シーズン前、中野は夫人を交えて藤川監督と食事を共にした。
「監督の思っていることであったり、『何かあったら全然言ってきてくれていい』とその場で言われた。そういうコミュニケーションを取れたことで、やりやすい環境にしていただいていると思います。ある程度、監督の考えていることは、前から分かっていた」
7月からホームゲームの試合前練習で着用が解禁されたハーフパンツも、選手会長として指揮官へ意見を述べた。「疲労とかも考えて、チームがどうしたらうまく回っていくかとか。野球以外のところで、そういうことを監督に伝えさせていただくこともあった。そこのコミュニケーションはすごく取れているかなと思います」。練習量の調整は打撃コーチを交えて意見を交わした。
他球団がけがによる離脱者に苦しんだ中、阪神は違った。それも、風通しのいい環境があってこそ。「監督とコーチ、トレーナーさんも含めて、何かあったら言うようにと伝えられている。そういう意思疎通というのはできているので、タイガースはけが人が少ないのかなと思います」-。決して一方通行ではない。双方向からコミュニケーションを図ることで、虎は一枚岩になった。
「藤川監督を含めて、皆さんと風通しがいい。言いたいことも言えます。やり取りがしっかりできているからこそ、チームもうまく回って、いい雰囲気でいけた」
グラウンド外でも躍動した選手会長。最高の〝職場環境〟が選手の力を最大限に引き出し、最速Vへとつながった。
■中野 拓夢(なかの・たくむ)1996(平成8)年6月28日生まれ、29歳。山形・天童市出身。日大山形高2年夏の甲子園で二塁手として県勢初の4強入りに貢献。東北福祉大では1年春から遊撃手のレギュラー。4年春の全日本大学選手権で優勝。三菱自動車岡崎を経て2021年D6位で阪神入団し、同年に盗塁王。22年はベストナインに輝き、WBC日本代表にも名を連ねた23年は最多安打、ゴールデングラブ賞。今季は126試合に出場し打率・290、0本塁打、26打点、19盗塁(8日現在)。右投げ左打ち。172センチ、67キロ。推定年俸1億4500万円。背番号「51」