5月1日の広島戦。巨人・増田陸は延長十一回、坂本勇人のバットを借りて大きなヒットを放った 誰もいない東京ドームベンチ裏のロッカールームで、巨人・増田陸内野手(24)はつぶやいた。
「勇人さん、すみません。力をお借りします!」
5月1日の広島戦。増田陸は2試合連続で先発起用されるも4打席凡退。次こそ打たないとヤバい―。延長十一回の第5打席を前に思い立った増田陸は、不振で1軍を離れていた〝師匠〟坂本勇人内野手(36)のロッカーに向かった。数本置いてあったSSK社製のツートンカラー、自身のものよりグリップの根元が太いバットを1本、拝借した。
そのまま向かった1死一、二塁での打席で、栗林の初球を中前にクリーンヒット。得点にこそ結びつかなかったが、スタメンの座を守る大きな一打だった。
試合が終わるとすぐに坂本へ電話をかけ、勝手な行動をわびた。
「全然ええよ。ナイスヒット」
兄のように慕う坂本の短いほめ言葉が「めっちゃうれしかったです」。バットはそのままプレゼントされ、その日から「坂本バット」を手に打席に立っている。
9日のヤクルト戦。増田陸は3年ぶりの本塁打を放った9日のヤクルト戦(神宮)では坂本とともにスタメンに並び、四回に左翼席へ1号ソロを放り込んだ。過去2年間、1軍で無安打だった増田陸にとって、本塁打も2022年以来3年ぶり。毎年オフの自主トレだけでなく、普段からさまざまな助言をくれる師匠の目の前で成長を見せた。
4月21日に1軍昇格の連絡を受けた際には、近くにいた坂本も喜んでくれたといい、「人生がかかっているんだから、覚悟を決めてやってこい」と熱い言葉で背中を押された。
「何が何でも結果を出すことしか考えていない。自分次第」と並々ならぬ気合で、13日の広島戦では自身初の4安打をマークするなど打率・357と絶好調だ。入団時から変わらない望みは、坂本と一緒にプレーすること。再びファーム調整となった師匠の復活を待ちながら、出番を守り抜く。(谷川直之)