巨人時代からマメな気配りで知られた長野(現広島)を思わせるような、粋な気遣いだった。4月末に右膝内側側副靱帯(じんたい)を損傷して離脱中の巨人・坂本勇人内野手(33)だ。
14年連続で100試合以上に出場してきた〝鉄人〟にとって、最も長い離脱期間となったが、調整は終盤に差し掛かっている。戦列を離れている間も、坂本はチームのために動いていた。
ジャイアンツ球場で3軍の故障班に合流した5月2日。チームの大黒柱が離脱したショックと、〝大物〟が輪に加わる緊張感が漂っていた現場の空気を変えたのは、ほかでもない坂本自身だった。
ハッピーターン、ホームパイ、コアラのマーチ…。気軽に手に取れるおいしいお菓子の数々。坂本はリハビリの面倒を見てくれるトレーナーや、ファームを担当する裏方のためにそれらを〝大人買い〟し、川崎市のジャイアンツ球場のクラブハウスに持ち込んだのだ。
1軍で戦い続けてきた主将とは馴染みの薄い顔ぶれもいたが、あいさつ代わりに配られた差し入れがコミュニケーションのきっかけになった。「気遣いがうれしいよね。チョーさんみたい」とはスタッフの一人。絶妙なタイミングでチームにさりげなく差し入れを届けていた、かつての同僚・長野のようなマメさに、雰囲気は自然と明るくなった。
一回り以上も年下の選手が多い3軍の選手たちにも気さくに声をかけた。助言を請われれば真剣に答え、道具を欲しがっていた育成ドラフト4位・笹原操希(みさき)外野手(18)=上田西高=には、1軍で使い続けたマスコットバットを快くプレゼントした。
主将8年目で磨きがかかったコミュニケーション能力で周囲の士気を高めながら、自身のリハビリにも前向きに取り組んだ。「ここまで時間ももらっちゃっていますし、中途半端にだけは戻りたくはない。この期間中に、違う部分で鍛えられる部分は鍛える」。完全復活を果たし、支えてくれた周囲のサポートに報いる。(谷川直之)