勝っておごらず、負けて腐らず―。座右の銘が表す誠実な人間性も、ルーキーたちのお手本となる。巨人の新人合同自主トレは第2クール。新人とともに、大竹寛巡回トレーニング統括補佐(38)も新鮮な気持ちで体を動かしている。
12月、1月は許可を得たトレーニングコーチだけが新人選手を指導できるため、トレーニング部門の指導者になった同コーチに早速、〝初仕事〟が与えられた。守備練習ではノッカー役を務めるが、空振りや打ち損じをする場面もあり、「正直、慣れていなくて…大事に打つように気をつけています」と頭をかいた。現役時代に仲間から慕われた〝癒し系〟の存在感は変わらない。
広島、巨人で計20年間の現役生活に昨季限りで幕を引き、指導者に転身。「コーチとして最低限動けるように」と、引退の理由となった右ひざ半月板を昨年11月に手術し、自身のリハビリとコーチ業を同時進行している。引退後はトレーニングに関わる書籍を読み込む毎日。「一つひとつが勉強。僕も一日を大事にして、成長できるように」と、新人たちに劣らぬ気合を見せている。
埼玉・浦和学院高からドラフト1位で広島に入団した1年目の春にいきなり右肩を負傷した経験から、「いい球を投げたいという気持ちが焦りにつながってしまう。自分のペースでやってほしい」と合同自主トレ期間中にルーキーたちへ送った言葉にも実感がこもる。その後も故障を乗り越えながら20年間マウンドに立ったキャリアに基づく助言は、貴重な教材となるだろう。
また、通算102勝(101敗)、26ホールド、17セーブを積み上げた一流の投手でありながら、飾らず、心優しい性格でも知られた。引退会見では意外にも「自分では短気だと思います。若い時は感情をむき出しにして、よく怒られた」と振り返り、「黒田さんや新井さん、野村謙二郎さん、色んな方に指導いただいて、ちょっとずつ丸くなった」と、〝聖人〟となるまでに精神的な成長を経たことを明かしていた。自分自身を変えた経験があるからこそ、若い選手の気持ちも理解できるはずだ。
「選手のために何ができるかを一番に考えて、選手に寄り添った行動が取れたらいいな」と理想を描く新米コーチ。技術面以外にも、若手が学べることがたくさんある。(谷川直之)