正力松太郎賞を受賞し笑顔の高津監督。今季の躍進を支えた合言葉が記されたタオルを掲げた (撮影・福島範和) 今年のプロ野球の発展に貢献した監督、選手らに贈られる「正力松太郎賞」の選考委員会が7日、東京都内で開かれ、ヤクルトを20年ぶりの日本一に導いた高津臣吾監督(53)が満場一致で選ばれた。球団では2001年の若松勉監督(当時)以来、5人目。金メダルと賞金500万円が贈られる。東京五輪日本代表監督の稲葉篤紀氏(49)と、米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平投手(27)は特別賞を受賞。2021年の日本を盛り上げた3人が栄誉を手にした。
燕の指揮官に、新たな栄誉だ。高津監督が、プロ野球の発展に最も貢献した競技者に贈られる正力松太郎賞を受賞。真っ先に口をついたのは、喜びではなく謝意だった。
「僕がいただきましたけど、チームのみんながそこに導いてくれたんだ、と。その賞を代表していただく。胸を張っていきたい。本当にチームメートをはじめ、皆さんに感謝しています」
2年連続リーグ最下位から巻き返し、今季は6年ぶりのリーグ制覇と20年ぶりの日本一を達成した。前年最下位からの日本一は1960年の大洋(現DeNA)以来、史上2度目。チーム一丸でつかんだ栄光の中心に、高津監督がいた。
光ったのは「言葉の力」だ。9月7日の阪神戦前にナインに伝えた「絶対大丈夫」というフレーズは、ファンにも〝勝利の合言葉〟として浸透した。クライマックスシリーズ前には「受け身にならず、前のめりに」と伝え選手を鼓舞。日本一まで駆け上がった。
選考委員会でも、その「言葉の力」が話題になり、座長を務めるソフトバンク・王貞治球団会長からは「技術より言葉が大事」と評価されたという。満場一致での選出に、高津監督は「チーム全体として今年は勝ってきた。監督の言葉も、その一部だったのかな」と感慨深げだった。
球団では2001年の若松勉監督以来、20年ぶり5人目の受賞。過去には、監督として日本一に導いた78年の広岡達朗氏、93年の野村克也氏と名将が並ぶ。高津監督は「肩を並べるとか、名を連ねるなんて思っていませんし、スワローズを代表してという気持ちが強い」と謙虚に受け止めたが、球史に名を残したのは紛れもない事実だ。
昨年1月。球団のOB会で、生前の野村元監督に「最下位のチームなんだから、しっかり頭を使え」と助言された。今季は、捕手の中村を2番打者で起用するなど大胆な采配も披露。「その言葉通り、信じてやってきたつもりです。それが実を結んだというか、僕を支えてくれた大きな言葉だった」とうなずいた。
東京五輪で金メダルを獲得した日本代表・稲葉前監督、投打二刀流で活躍しア・リーグ最優秀選手(MVP)に輝いたエンゼルス・大谷は特別賞に選ばれた。野球、スポーツの力で日本中を盛り上げた2021年を象徴する3人。日本一監督には、プロ野球界の個人表彰では最高額となる賞金500万円(特別賞は300万円)が贈られる。
「(野村元監督は)さすがによくやったと、褒めてくれるんじゃないですか。でも、その前に一言二言つくでしょうね。第一声で『フンッ』は言いますね」。高津監督は表情を緩めた。球団初の2年連続日本一へ。最高峰の栄誉を誇りに、再び栄冠を目指す。(赤尾裕希)