10月19日、現役最後の登板となった松坂大輔=メットライフドーム(撮影・加藤圭祐) 今季も多くのプロ野球選手がユニホームを脱いだ。10月19日。〝平成の怪物〟こと西武・松坂大輔投手(41)がマウンドに別れを告げた。現役最後の対戦打者となった日本ハム・近藤健介外野手(28)は感慨に浸った。
「松坂さんは小さい頃からずっと追いかけ続けてきた大先輩。こうして引退試合に立ち会えたことだけでも幸せですが、打席に入って対戦できたことは一生の宝物です」
横浜高の13学年下の後輩がこう語るように甲子園大会での春夏連覇、衝撃のプロデビュー戦、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でのMVP獲得など松坂投手から夢や希望、感動をもらった人は多いはずだ。
実は記者も〝宝物〟をもらったそのひとりだ。遡(さかのぼ)ること5年前の2016年。当時、松坂投手は日本球界復帰2年目でソフトバンクに在籍。記者は四国IL・香川で内野手としてプレーしていた。調整登板の一環として奇跡的に対戦することができた。
ランナーなしで迎えた最初で最後の対戦。投球直前、18・44メートル先には体を小刻みに揺らし、ワインドアップする松坂投手が。野球少年なら誰もが一度はまねをしたことがあるであろうおなじみのフォームだ。心の中で「あの松坂大輔が振りかぶって投げてくる!」と息をのんだことを今でも鮮明に覚えている。
結果は手元で内角に鋭く変化するボールに対応できず一ゴロ。この試合の直球の最速は147キロ。3回を無失点に抑えられた。
引退登板の最速は118キロだった。全球ストレートを投じ、最後はカウント3-1から内角に外れ四球となった。満身創痍(そうい)の体で〝今〟のすべてをさらけ出した魂の5球。代名詞の剛速球ではなかったが最後の最後まで懸命に腕を振る姿は見る者の胸を打ち、球場は温かい拍手に包まれた。
今後について「家族と過ごす時間を増やしながら、違ったところで野球を見ていきたい。野球界、スポーツ界に恩返しできる形をつくっていけたら」と松坂投手。始まった平成の怪物の第2章。次はどんな〝宝物〟を与えてくれるのだろうか。(加藤次郎)