2021.4.9 05:00

【野口教授の分析】池江璃花子の強さはレースで即課題修正

【野口教授の分析】

池江璃花子の強さはレースで即課題修正

特集:
池江璃花子
女子100メートル自由形決勝、優勝した池江璃花子の泳ぎ=東京アクアティクスセンター(撮影・恵守乾)

女子100メートル自由形決勝、優勝した池江璃花子の泳ぎ=東京アクアティクスセンター(撮影・恵守乾)【拡大】

 東京五輪代表に決まった池江の泳ぎについて、日本水泳連盟科学委員で、400メートル自由形元日本記録保持者でもある日大文理学部の野口智博教授(54)が分析。白血病の発症から2年余りで、100メートルのバタフライと自由形を制した要因を挙げた。(取材構成・角かずみ)

 白血病からレースに復帰して7カ月。池江の泳ぎは、私の予想をはるかに超えている。

 好記録の要因は予選、準決勝、決勝と3本のレースの積み上げにある。当初、1種目3本のレースをこなすことは、体力面に不安のある池江にとって、不利に働くとみていたが、違った。

 3日午前の100メートルバタフライ予選はターンをする際、壁に近くなりすぎたことで勢いを失った。わずか4回のドルフィンキックで浮き上がってしまい、後半のスピードを欠いた。

 同日午後の準決勝は、スタートからのドルフィンキックを予選より2回増やしてターン動作に入れるように調整したが、手のかき数が予選より1かき減った。今度は壁までの距離が遠くなり、間延びしてしまった。

 4日の決勝は反省を生かし、ターンを合わせたことで壁をしっかり蹴れた。スピードに乗れたことで、後半の50メートルは準決勝より、1かき少ない22かきでフィニッシュ。2016年4月の頃とほぼ同タイムまで記録を伸ばせた。

 100メートル自由形も同じ。7日午前の予選は前半から飛ばしたが、同日午後の準決勝は前半を抑えて後半上げるという今まで見たことのないようなレースを見せた。8日の決勝でタイムを出すためにどんなレース展開をするか課題を探りつつ、体にダメージが残らないような工夫も見られた。

 50メートル、100メートルのスプリント種目の技術面は、レースのスピードでなければ課題が見つかりにくく、練習では埋められない部分もある。レースから遠ざかっていた池江は、レースをしながら課題を見つけ、すぐさま修正することで、好記録を連発した。

 今大会の記録は100メートルバタフライ、自由形ともに16年春ごろの記録と同等。これからはともに日本新の自己ベスト(100メートルバタフライは56秒08、100メートル自由形は52秒79)に向けて強化していくステージに入る。それは来年、再来年の話だと思っていたが、この調子なら東京五輪で、自己記録を狙えるところまで上がってくる可能性も十分考えられる。(日本水泳連盟科学委員)