2021.3.4 12:00

【ベテラン記者コラム(115)】前時津風親方の「退職勧告」と元横審委員・内館さんの先見

【ベテラン記者コラム(115)】

前時津風親方の「退職勧告」と元横審委員・内館さんの先見

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前時津風親方

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 大相撲の「時津風部屋」の師匠だった、前時津風親方(47)=元幕内時津海=が、さきの臨時理事会で「退職勧告」の懲戒処分を受け、日本相撲協会から去った。1月の初場所開催中、外出を禁止した協会の新型コロナウイルス対策のガイドラインに違反し、マージャン店ばかりか風俗店などにも出入りしていた。昨年秋場所前にも不要不急の外出を禁止していた期間中に地方でゴルフをするなどして降格処分を受け、今回は2度目のガイドライン違反だった。

 八角理事長(元横綱北勝海)からは同様の違反を繰り返した場合にはさらに厳しい処分となる旨の説諭もされていたが、結果的に前回の処分は、抑止力にはならなかったことになる。

 ガイドライン違反では、昨年7月場所中に当時幕内の阿炎(現幕下)らがキャバクラを訪れ、3場所出場停止処分などを受けた。その阿炎も令和元年11月にSNS(会員制交流サイト)への不謹慎投稿、2年2月にはSNSの危険性に関する研修会で「爆睡していた」などと放言を並べ、協会から厳重注意を受けている。

 同じ人物による度重なる失策には、平成12年に女性として初めて横綱審議委員会(横審)の委員となり5期10年の任期を務めた脚本家、内館牧子さん(72)の意見が示唆に富んでいた。内館さんは大相撲やプロボクシング、プロレスなど格闘技好きで造詣も深い。会場でもよくお見掛けした。土俵やリングには「日常」との“結界”があるとして、力士やボクサーへ尊敬の念も抱いておられた。だから、力士や格闘技選手の不適切行動にはよくよく「教育」の大切さも訴えていた。

 横審委員だったとき、度々品格を問われた外国出身の横綱がいた。内館さんは将来、協会運営を担う親方には、職種に関係なく一般企業へ出向き、新入社員の研修のように「社会の風に吹かれ、(組織の)基本を学ぶことは勉強になる」と持論を語り、実際、横審の会合でも主張したことがあったという。

 現在、早大大学院スポーツ科学研究科の修士課程1年制で学ぶ荒磯親方(元横綱稀勢の里)、初場所で平幕優勝を果たした大栄翔も日大大学院に在学中。安治川親方(元関脇安美錦)も4月から荒磯親方と同じ課程に入学する。かたちは異なるが、学びへの“萌芽(ほうが)”だとすれば歓迎すべきことだろう。

 初場所では、新型コロナウイルスの陽性者と濃厚接触の可能性がある協会員83人(力士65人)が休場。緊急事態宣言下、綱渡りの15日間を乗り切った。前時津風親方の弟子だった大関正代はかど番を脱して優勝を争ったが、その正代へ感染させたら、という思いに至らなかったことは浅はかで悲しい。「処分」と「教育」の両輪がそろって、前へ進める。(奥村展也)