2021.2.22 18:16

4連覇女王・伊調馨からの「金」言!外部コーチとして、五輪を目指すアスリートへ/サンスポ×日体大

4連覇女王・伊調馨からの「金」言!外部コーチとして、五輪を目指すアスリートへ/サンスポ×日体大

特集:
サンスポ×日体大
日体大で練習を行う伊調馨(右)=東京都世田谷区(撮影・福島範和)※コロナ感染拡大前の撮影です

日体大で練習を行う伊調馨(右)=東京都世田谷区(撮影・福島範和)※コロナ感染拡大前の撮影です【拡大】

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 東京五輪開幕まで23日で150日。出身大学別で夏季五輪最多のメダリスト62人を輩出している日体大とコラボレーションした長期連載の第28回は、レスリング女子で五輪4連覇を果たした伊調馨(36)=ALSOK=が登場。東京五輪代表の座を逃し、昨年4月から日体大女子レスリング部の外部コーチを務める。コロナ禍で東京五輪開催が不透明の状況でも奮闘するアスリートへ、自身の経験を踏まえながら「普段の練習の積み重ねが大事」などとエールを送った。(取材構成・石井文敏)

 ■とにかく「普段の積み重ね」

 マット上で闘う姿と異なり、36歳の伊調は柔和な表情を浮かべた。東京五輪代表の道が消滅した2019年11月以降は、選手として汗を流す傍ら指導者として後進の育成に力を入れている。夏季五輪で前人未到の4連覇を成し遂げたレジェンドが、現役選手に成功への“極意”を明かした。

 「普段の練習の積み重ね。いかに全力で注げるか、準備できるかが大事。反省し、修正して、明日はこうしよう、と。それの繰り返しです」

 02年世界選手権から16年リオデジャネイロ五輪まで、五輪と世界選手権の14大会で全勝など金字塔を打ち立ててきた。中でも五輪3個目の金メダルを獲得したロンドン大会を例に挙げ、継続の重要性を説いた。

 12年8月8日、ロンドン東部にあるエクセル。女子63キロ級で当時28歳の伊調は全4試合を制し、公式戦不敗記録も「153」まで伸ばした。決戦4日前の練習中に左足首の靱帯(じんたい)を4本中1本以上も切った状態でも強さは不変だった。

 ■直前には「イメージトレ」を

 試合前のルーチンは、「コンディション面では回復をいかにできるか。減量に合わせた練習量と気持ちのピークを作るためにイメージトレーニングを多くする」と伊調は明かす。けがを負う逆境でも、選手村では治療に注力しながら最低限の感覚を落とさないために体を動かした。ライバル選手を映像で分析し、イメージトレーニングを重ねたという。迎えた当日は「けがなんて関係ない。それまで準備していたので。4日間休んでいる分、『きょうはレスリングができる』と気持ちが爆発した」と述懐した。

 ロンドン五輪前、国内の練習では男子合宿にも参加するなど感覚に理論での裏付けを追い求めた。書き記したノートは効率的な攻め方や技の図解でぎっしり。週の半分以上は練習後に落ち込みながら帰路についていたと苦笑いするが、探求心を秘める伊調は「明日はこういうふうに考えてみよう、自分よりちょっとうまくない人とやって自信をつけようなど、工夫次第で明日はよくなるかもしれない。突破口や新しい発見が生まれることもある」。自身の経験を踏まえ、若きアスリートへ助言を送った。

 ■試合は発表会。反復も大事

 伊調は「試合は発表会」と表現する。心技体を極限にまで仕上げる実戦直後、早い段階での反復が大事だと強調する。「試合のイメージが新鮮なうちに練習で繰り返すことが重要。鉄は熱いうちに打て。伸びしろはそこなんじゃないかな」。心と体のバランスを考えながら、最良の選択を勧めた。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により1年延期された東京五輪開幕が150日後に迫る。不透明な情勢が続く中、日本代表選手の活躍を、伊調は願う。「試合ではそれまでの練習の成果を出すことを、念頭に置いて戦うべきです」。求道者の言葉には重みがある。

 ★指導者としての意識

 伊調は東京五輪代表が消滅した2019年11月以降、その前年から練習拠点にしていた日体大女子レスリング部で、自らトレーニングを行う傍ら後進の育成に励む。指導で意識することは「その子の性格や取り組み方、考え方を理解すること」で、女子学生とのスパーリングでは手加減は一切しないという。昨年12月の全日本選手権65キロ級女王の森川美和(21)は「一度も勝ったことがない、本当に強い」。先輩は「早く倒せと言っているが、まだまだ大丈夫」と笑った。

伊調 馨(いちょう・かおり)

1984(昭和59)年6月13日生まれ、36歳。青森・八戸市出身。兄、姉の影響で競技を始める。愛知・中京女大付高(現至学館高)、中京女大(現至学館大)を経てALSOK。五輪は2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン、16年リオデジャネイロと女子の個人種目で全競技を通じて史上初の4連覇、東京は代表入りを逃す。世界選手権は5連覇など10度優勝。16年に国民栄誉賞を受賞。166センチ。