2021.1.1 12:00

【ベテラン記者コラム(90)】「ジャンプ週間」取材で経験した、貴重な海外での年越し

【ベテラン記者コラム(90)】

「ジャンプ週間」取材で経験した、貴重な海外での年越し

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ジャンプ週間開幕戦で飛躍する小林陵侑=オーベルストドルフ(ロイター)

ジャンプ週間開幕戦で飛躍する小林陵侑=オーベルストドルフ(ロイター)【拡大】

 あけましておめでとうございます。

 大みそかは在宅勤務で、2021年になる瞬間は仕事をしながら迎えた。新聞社のデスクにはよくあることだが、記者生活の中では、新年を外国で迎えたこともある。

 ノルディックスキー・ジャンプは年末年始に欧州で伝統の「ジャンプ週間」がある。12月29日・オーベルストドルフ(ドイツ)、1月1日・ガルミッシュパルテンキルヘン(ドイツ)、同3日・インスブルック(オーストリア)、同6日・ビショフスホーフェン(オーストリア)の全4戦。現在はW杯の一環として開催されるが、もともとはW杯よりも古い1952~53年シーズンから始まり、この4戦だけでの王者を決める。ジャンプ選手にとっては、五輪や世界選手権と並ぶ価値のある大会だ。

 スキー担当だったとき、1998年長野と2002年ソルトレークシティーの冬季五輪イヤーのときはジャンプ週間の取材にも行った。元日にガルミッシュパルテンキルヘンで第2戦が行われるので、大みそかはここに泊まって年を越した。1936年の冬季五輪開催地だが、人口3万人に満たない街である。オーストリアとの国境近くで、もちろん周りは山ばかりだ。

 記者仲間と夕食をとり、宿に戻る途中のこと。雪が降る中、細長い帽子と頭巾をかぶってたいまつを持った集団の行列を見た。誰も声を出すわけでもなく、鐘が鳴り響く中、火を掲げて粛々と進んでいた。大みそかにガルミッシュパルテンキルヘンに泊まったときは2度ともこの行列を見たので、毎年の行事のようだ。日本では見たことのない光景で、印象に残っている。貴重な経験だ。

 これを除けば、ドイツでは年末年始もそれほど騒ぐこともなく、あっさり新年を迎えた。2002年は元日から通貨がユーロに切り替わった。ガルミッシュパルテンキルヘンでの取材が終わった後、インスブルックに移動したが、元日でも普通に銀行が開いていて、これまた日本ではありえないことなので、重宝した。さっそく日本円をまっさらなユーロ紙幣と硬貨に換金した。ドイツ語では「オイロ」と発音するので、なかなか通じなかった覚えもある。

 いまはコロナ禍で渡航もままならない。ジャンプ週間の大会も史上初めて無観客で行われている。例年なら4戦で計10万人以上が集まるにぎわいなのに、嘘のようである。一昨季に総合優勝を果たした小林陵侑ら日本選手にとっても厳しい環境かもしれないが、健闘を期待したい。(牧慈)