【佐野稔の舞評論】
羽生結弦のフリーの演技=26日、長野市・ビッグハット(代表撮影) 【拡大】
フィギュアスケート・全日本選手権第2日(26日、長野市ビッグハット)今日の羽生のフリーは伝説になるだろう。
コロナ禍で世界中が沈む中、羽生自身も拠点のカナダに行けず、ずっと仙台で夜中に練習していたと聞いているが、そうしたことをすべてプラスに変えた。「こんなことで負けない、やればできるんだ」ということを示した。フィギュアやスポーツの好き嫌いを超え、世界中に勇気と希望を与えたと思う。
4回転ループをプログラムに組み込んで以降、ジャンプの失敗など目立つミスなくSPとフリーをそろえたのは初めてだろう。それも10カ月も空いての今季初戦で、だ。25日のSP後、「羽生にしてはまだまだ」と評論したが、撤回したい。技術的には非の打ちどころがなかった。この演技には、世界選手権でライバルになるネーサン・チェン(米国)もビビるのではないか。
その先にあるのは1年後の北京冬季五輪だ。本人はそこまで明言してはいないが、これほど鍛え上げてきたことで、北京で3連覇を目指すんだと体が表現している。そう考えるのが自然だろう。(1976年インスブルック五輪代表)