2020.11.27 12:00

【ベテラン記者コラム(75)】不正な選手画像利用の禁止へ一歩 今後の進展に期待

【ベテラン記者コラム(75)】

不正な選手画像利用の禁止へ一歩 今後の進展に期待

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 日本オリンピック委員会(JOC)や日本スポーツ協会などスポーツ関連7団体は今月13日、連名で声明文を発表した。

 「アスリートの盗撮、写真・動画の悪用、悪質なSNS投稿は卑劣な行為です」

 競技会場で性的な意図で写真を撮影されたり、会員制交流サイト(SNS)にみだらな文章とともに画像を拡散されたりしている-と、陸上競技の女子選手を中心に相談が相次いだ問題への対応だ。「まずはこうした行為が悪質で卑劣であるということを社会に訴える」と説明するのは、この問題を担当するJOCの籾井圭子常務理事。

 現実には、まだ確実な抑止策は見えていない。

 インターネットやSNSの普及で、この種の画像の公開の場は大きく広がった。不正な意図が疑われる撮影者の入場規制などで対処してきた各競技団体も、広く普及したスマートフォンまでは制限できない。会場内での“盗撮”も「衣服の上からの撮影を法的に盗撮と呼べるかは微妙」と籾井常務理事。低年齢層の大会では保護者による撮影の需要も大きく、規制の線引きはより難しい。また、実際には報道写真を流用する例の方が数は多く、制限しきれない。

 選手が個々に対応しようにも「プロバイダーへの削除要求は多くの手続きを踏んで、それでもできるかできないかというのが現状」(籾井常務理事)だという。

 とはいえ自身の写真が悪意をもってさらされ、傷つく選手がいるのは事実。それを社会に訴え、まずは一般に問題意識を持ってもらうのが声明の狙いの一つだ。ネット上には「陸上競技など女子の方が男子より露出が激しい。いやなら隠せ」という声もあるが、「それは『性犯罪は被害者が悪い』というのと同じ」。籾井常務理事は厳しくはねつける。

 アダルトビデオの出演者の顔を芸能人に差し替えた映像がネットに上げられていた例のように、“盗撮”や画像・映像加工による被害はスポーツだけの問題ではない。JOCなどは室伏広治スポーツ庁長官に、総務省や法務省など関係各省庁と連携した対応も求めた。

 「相談窓口を作っても現状では精神的なアドバイスしかできない。法的対応ができる体制を組んでからでないと意味がないが、行政機関も巻き込んだ動きを求めるには実態を示さないと」と籾井常務理事。今後は被害だけでなく会場やネット上での目撃情報もJOCのホームページ上で募り、実態把握に努める。

 被害を訴える選手は女子だけではないという。選手の人権を守る動きが一歩ずつでも進んでくれればと期待したい。(只木信昭)