2020.11.20 12:00

【ベテラン記者コラム(72)】27年ぶりの「居反り」 相撲界を業師たちで盛り上げてほしい

【ベテラン記者コラム(72)】

27年ぶりの「居反り」 相撲界を業師たちで盛り上げてほしい

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旭秀鵬を居反りで破った宇良

旭秀鵬を居反りで破った宇良【拡大】

 大相撲11月場所5日目の十両の取組で、関学大出身の業師、宇良が大技の「居反り」を決めた。旭秀鵬の左わきに頭を潜らせ、後方に体を反らせて相手を横転させた。

 十両以上で居反りが決まるのはきわめて珍しく、平成5年初場所12日目の十両で智ノ花が花ノ国に決めて以来、27年ぶりだった。この取組は生で見ていたから、時の流れの速さにちょっとビビる。

 当時の大相撲は若貴ブーム。若花田、貴花田の兄弟に安芸ノ島、貴闘力、貴ノ浪らを加えた藤島部屋勢と、小錦、曙、武蔵丸らハワイ勢との対決構図がメインだったが、業師や小兵の“脇役”も多士済々だった。“技のデパート”舞の海が珍手「三所攻め」を2回も決めたり、“南海のハブ”旭道山が張り手一発で武蔵丸をKOしたり…1面や終面(裏1面)を飾ったものだ。

 そんな時期に27歳の妻子持ちの元アマ横綱・成松が高校教師の職をなげうって立浪部屋に入門したので大きな話題になった。当然、新米記者は立浪部屋に日参することになる。初土俵は平成4年の春場所。当時、立浪部屋の大阪宿舎は生玉寺町の寺にあった。稽古を終えた成松らが坂を下って黒門市場の近くにある銭湯へ行くときに話を聞くのが日課だった。

 成松もアマ時代に居反りを得意としていた力士で、幕下付け出しでプロ入りしてからも何度か居反りを狙いにいったが、下手ひねりと判定されたりしていた。ついに居反りを決めたのが十両に上がり智ノ花に改めて2場所目で、昭和39年夏場所2日目に幕内で“潜航艇”岩風が決めて以来、実に29年ぶりだった。

 大型力士の迫力ある攻めも魅力だが、小兵、軽量の力士の柔よく剛を制す相撲も土俵の醍醐味(だいごみ)だ。最近は炎鵬、石浦らが幕内や十両の土俵をにぎわしている。宇良も度重なる大けがを乗り越えて16場所ぶりに十両に戻り、見事に勝ち越した。これからも業師ならではの相撲でファンをわかせてほしい。(牧慈)