2020.10.13 17:30(1/3ページ)

【TOKYO2020+1カウントダウン】“カヌー界の風雲児”足立和也、家賃7000円長屋から日本勢初メダルだ!!

【TOKYO2020+1カウントダウン】

“カヌー界の風雲児”足立和也、家賃7000円長屋から日本勢初メダルだ!!

真剣な表情でパドルを漕ぐ足立。東京五輪では地の利を生かして「世界一」を狙う(撮影・塩浦孝明)

真剣な表情でパドルを漕ぐ足立。東京五輪では地の利を生かして「世界一」を狙う(撮影・塩浦孝明)【拡大】

 カヌー・スラローム男子カヤックシングル東京五輪代表の足立和也(29)=山口県体協=が13日までにサンケイスポーツのインタビューに応じた。海外遠征にかかる費用などを捻出するため、山口・萩市内の山奥にある家賃7000円の長屋で市場大樹コーチ(43)と共同生活。貧乏生活に耐え、東京五輪の切符をつかんだ“カヌー界の風雲児”が、同種目で日本勢初のメダル獲得を狙う。(取材構成・武田千怜)

■まさにポツンと一軒家

 耳を澄ませば、川のせせらぎや鳥のさえずりが聞こえてくる。時には猿の鳴き声で目を覚ます。緑に囲まれた「まさにポツンと一軒家」。足立の東京五輪への道は山口・萩市の市街地から南東へ車で約30分、山奥にある長屋から始まった。

 「カヌー以外にやることがない状況が自分には必要だった。四六時中、競技のことを考える。修行みたいな感じ。世界一になってやるとギラついていました」

 21歳の冬、足立は覚悟を決めた。駿河台大(埼玉・飯能市)の3年時に初出場したW杯で惨敗。「下から数えた方が早かった」と世界との差を痛感し「トップを目指すには大きな決断をする必要があると思った」。競技に専念するため大学を中退。世代別の日本代表合宿時に指導を受けた市場コーチの住む山口・萩市内の家に転がり込んだ。

■バイト代全て遠征費に

 二人三脚でカヌーに集中するため、練習拠点の阿武(あぶ)川から車で2~3分の長屋に2人で移住。阿武川に隣接する食堂でアルバイトをしながら練習に打ち込んだ。時給は800円。月収は10万円ほどだった。

 カヌー競技は夏場に約3カ月、艇を運びながら欧州を転戦する。食費や宿泊費など、遠征先での生活費だけでも1カ月に10万円以上かかる。加えて航空券代に、練習コースの使用料…。費用を捻出するため、1K(8畳)、ユニットバス、家賃7000円の長屋で切り詰めて暮らした。家賃や光熱費は市場コーチが負担。アルバイト代は全て遠征費に充てた。ギリギリの生活だったが「つらさはなかった。世界のトップになりたい一心だった」とわき目もふらず突き進んできた。

 山奥での節約生活。カヌー界では異例のスタイルで世界に挑む。2016年リオデジャネイロ五輪カナディアンシングル銅メダルの羽根田卓也(ミキハウス)が18歳でスロバキアに渡り、武者修行したように、世界のトップ選手は本場の欧州で鍛錬するのが一般的だ。「技術も、環境も圧倒的に上。絶対に欧州でやる方がいい。でも、僕にはそんなお金はない」。足立は自分の力で「世界で通用する」トレーニング環境を整えた。

【続きを読む】

  • 色紙に決意を記した足立。日本で腕を磨くパドラーが世界に挑む(撮影・塩浦孝明)
  • 緑に囲まれた山口・萩市内にあるアパート。家賃7000円の一室から足立の東京五輪への道が始まった(YMN提供)
  • 足立が改造した阿武川のコース。阿武川ダムの放流時間に練習し、激流を進んだ(YMN提供)