2020.9.29 18:17

【五輪を語る 尚美学園大学教授・佐野慎輔】組織の基礎固めた鈴木大地長官に及第点

【五輪を語る 尚美学園大学教授・佐野慎輔】

組織の基礎固めた鈴木大地長官に及第点

特集:
五輪を語る 尚美学園大学教授・佐野慎輔
スポーツ庁の鈴木大地長官

スポーツ庁の鈴木大地長官【拡大】

 スポーツ庁の鈴木大地長官(53)が30日、退任する。5年前、発足と同時に就任。フットワーク軽く走り続けた行動力に賛辞を贈りたい。

 日本水泳連盟会長にして順天堂大学教授、何より1988年ソウル五輪100メートル背泳ぎの金メダリスト。アスリートであり教育者、研究者にして組織の指導者から48歳の転身だった。自らを「スポーツの総合商社」という経歴は、発足間もない組織に光をあてるには格好であった。

 ウオーキングシューズを履いての通勤。職員とともに夕刻の皇居外周を歩いてみせたりもした。目標とする成人のスポーツ実施率向上(週1回以上の実施42・5%から65%へ)に向けたパフォーマンスである。

 就任早々「スポーツで稼ぐ」と公言。スポーツ産業振興に力点を置くとの宣言は、アマチュアリズムの呪縛にとらわれる日本スポーツ界に一石を投じた。むろん、背後には当時の安倍晋三政権の「骨太の政策」があった。15年の5・5兆円規模から25年で15兆円規模へ。道筋は整えたが、新型コロナウイルス禍もあり目標にはまだ遠い。

 在任中、文化、観光庁との3庁連携でスポーツツーリズムを推進。大学統一スポーツ組織「UNIVAS」を発足させた。スポーツ界の規律醸成へ、ガバナンスコードも策定している。ただ中身の充実はこれからである。

 一方、体罰やハラスメント、部活問題などでは十分、指導力を発揮できたとはいえない。寄せ集め官庁の不統一感も依然、課題として残る。行政のプロに操られた面も否めないが、それでも、組織の基礎を固める初代長官として及第点だと思う。