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【TOKYO2020+1カウントダウン】田中希実の原点 陸上一家で育った“マルチランナー”

【TOKYO2020+1カウントダウン】

田中希実の原点 陸上一家で育った“マルチランナー”

8月の大会で1500メートルの日本記録をマークした“令和の超特急”田中(手前)

8月の大会で1500メートルの日本記録をマークした“令和の超特急”田中(手前)【拡大】

 陸上女子中長距離で東京五輪を目指す田中希実(のぞみ、21)=豊田自動織機TC=は今夏、破竹の勢いでトラックを駆け抜けた。本命は5000メートルだが、1500メートルと3000メートルで日本記録を更新。10月1日開幕の日本選手権(新潟市・デンカビッグスワンスタジアム)でも期待を背負う。ランナー一家で育ったホープのルーツとは-。(取材構成・鈴木智紘)

 視線の先には、いつも両親の背中があった。東京五輪期待の星、田中はランニングを日常とする家庭で育った。

 「(競技人生は)親子マラソンなどでロードレースを楽しく走ることから始まっています」

 母の千洋さん(50)は現役市民ランナーで、これまでに90回以上フルマラソンを走破。1997年と2003年に北海道マラソンを制した実力者だ。父の健智(かつとし)さん(49)は、かつて活動していた実業団の川崎重工に所属した。3000メートル障害が得意で、日本選手権でも走った。ランニングイベントの企画やICチップを使った計測で長距離界の発展を目指す「アスレック」を06年に創業。代表を務めながら、コーチとして娘を支えている。

 田中は幼少期、イベントの受付や給水を手伝った。活気あふれる市民ランナーとの交流を通じ、走る楽しみを見いだした。貪欲さが芽生えたのは小学6年のとき。舞台はオーストラリアのゴールドコーストマラソンだった。親に連れられて出た児童向けの4キロレースで1等賞。「もっと速くなりたいと思うようになりました」。美しい海岸線での快走の記憶が、旺盛な向上心の源にある。

 短距離は得意ではない。50メートルは7秒台後半で100メートルは「15秒台が限界」。健智さんは「(娘は)苦手なことに背を向けない。宿題にしても、分かるまで人に教わろうとしなかった」と明かす。妹の希空(のあ、15)も所属する兵庫の強豪・西脇工高時代から地道にスピードを強化。1000メートル1本を走る練習にしても、細かく距離を区切ってペースを上げ下げし、自慢の末脚につなげる脚力を磨いている。

 出身は兵庫・小野市。田畑が広がり、ゴルフ場も多い。人口約4万8000人。同じ街から生まれたオリンピアンに憧れて育った。08年北京大会女子5000メートル代表の小林祐梨子さん(31)だ。「小野市はあぜ道が本当に多い。脚力を強くするために走る場所がたくさんあります」と小林さん。互いの実家は徒歩で簡単に行き来できる距離。今でもまれに2人で地元をランニングするほど親交は深い。

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