2020.9.19 12:00

【ネクストスター候補(20)】19歳ホープ御家瀬緑、社会人1年目の学びを糧に/陸上

【ネクストスター候補(20)】

19歳ホープ御家瀬緑、社会人1年目の学びを糧に/陸上

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 陸上100メートルで日本女王の御家瀬(みかせ)緑は、次代を担うホープとして期待される。北海道出身で社会人1年目の19歳。恵庭北高を卒業し、男子で9秒98の記録を持つ同郷の小池祐貴(25)が所属する住友電工に進んだ。男子走り幅跳び元日本記録保持者の臼井淳一氏(62)に師事し、さらなる成長を目指す。(取材構成・鈴木智紘)

 理論派か、感覚派か。どちらかといえば、19歳の御家瀬には後者が当てはまる。高校時代は基本的に自ら練習メニューを組み立てていたが、深く考えるタイプではなかったという。

 「体の感覚で“今日はこれ、今日はこれ”と、勘でやってきました。あまり勉強したことはなかったです」

 この春に高校を卒業し、大学ではなく実業団の住友電工に進んだ。同郷で尊敬する小池も師事する臼井コーチの指導を仰ぐためだ。「『速く走る練習だけでは速くなれないよ』とおっしゃっていて、興味がありました」。最も変わったのは走行距離。長くても150メートルまでで頻度も多くなかったというが、頻繁に300メートルを課されるようになった。

 あえてゆっくり走ることもある。足の接地や体重移動を丁寧に確認するためだ。300メートルの場合、設定タイムは48秒でイーブンペースを心掛ける。「後半はどうしてもスピードが下がるじゃないですか。(この練習で)スピードの落ち具合が大きくならない走りになっていくと思う」。100メートルのベストは11秒46。これを踏まえれば設定タイムは余裕があるように思えるが、正しい体の使い方を意識してペースを刻む分、考える力も使う。

 こうした臼井流の指導を大学時代から仰ぎ、飛躍につなげたのが小池だ。御家瀬は日本勢3人目の9秒台スプリンターを慕い、同じ道を志した。「(小池は)考えて走るタイプの選手で、私とは全然違います。勉強になる」。苦手なスタートを見てもらって助言を受けるなど、ともに練習しながら技術を吸収している。

 昨季、日本選手権で29年ぶりの高校生女王に輝いたホープ。期待を背に迎えた今季だったが、最速タイムは追い風参考の11秒89にとどまっている。上京して一人暮らしを始め、自炊するようになった。新型コロナウイルス禍で運動量が減る中、厳しい練習に励んだ高校時代の感覚で食事を取ったことから体重は約2キロ増。昨秋に負ったけがの影響で、オフシーズンは3カ月ほど走れなかった。筋肉量が落ちたのも体のキレを失った要因と省みる。

 思考をめぐらせるのは、トラックを離れても同じ。炭水化物を減らし、タンパク質を取る食生活に切り替えて体質改善を図っている。女王として臨む10月1日開幕の日本選手権(新潟)で挽回を期す。「(社会人としてのスタートを切る上で)考えが甘かった。経験は教訓になりました」。若き才能は、日々の学びを糧にたくましくなる。

【一問一答】

 --大学ではなく実業団に進んだ

 「人と違う道を行くことで、人と違う結果が出るんじゃないかと。新しい道が開けて、後輩たちにそういう道もあると示せたらいいなと思っていました」

 --なぜ臼井コーチに師事したかった

 「小池さんの成績や他に指導を受けている選手を見ていて、伸び方がすごくて。指導を受けてみたいと思いました。体の状態を考えてメニューを組んでくださいます。(フィーリングは)合っていると思います」

 --第一人者の福島千里も北海道出身。所属していたクラブの先輩にあたる

 「ずっと憧れの選手でした。まだ追いつけないと感じます。(日本選手権の100メートル)7連覇を見ていて、ずっと強くいるのは大変なのに、本当にすごいなと思いました。超えたい人という感じです」

 --東京五輪が延期された

 「今年だと厳しいという思いがありました。来年になったことで、心に余裕がちょっと出てきた。距離的には、今年やるより来年の方が近くなったのかな」

 --4年後にパリ五輪も

 「来年(の東京五輪)までに準備しきれるかといわれると、難しいところもあると思う。しっかり準備できるのはパリになるのかな」

■御家瀬 緑(みかせ・みどり) 2001(平成13)年6月2日生まれ、19歳。北海道出身。恵庭北高卒。住友電工所属。18年ジャカルタ・アジア大会代表。100メートルでは昨年の日本選手権で29年ぶりの高校生女王に輝き、全校高校総体で史上9人目の連覇を飾った。自己ベストは11秒46。161センチ、53キロ。