2020.9.18 12:00

【ベテラン記者コラム(45)】祭りとしてのルマン24時間

【ベテラン記者コラム(45)】

祭りとしてのルマン24時間

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 今週、フランス西部のサルト・サーキットでは伝統の自動車耐久レース「第88回ルマン24時間」が行われている。

 新型コロナウイルスの世界的流行で、本来の6月から大幅に日程が変更された。今年、世界三大レースのうちF1モナコGPは中止に。インディアナポリス500マイル(インディ500)は5月から8月に変更され、佐藤琢磨が2度目の優勝を飾ったが、例年30万人以上を集めるスタンドは無人だった。ルマンも今回は無観客で行われる。

 世界三大レースは、いずれも“お祭り”の側面が大きいが、中でもルマンは、そうした雰囲気が強いと思う。「日本のお花見と同じような感覚なんですよ」。もう20年近くも前、「ミスター・ルマン」と呼ばれた寺田陽次郎さんに聞かされた。

 「スタート時はスタンドに超満員のお客さんがいても、2、3時間もすると、みんなキャンピングカーに戻ってバーベキューをしている。(場内に)観覧車はあるし、射的場はあるし、大ビアホールが24時間営業していて飲めや歌えの大騒ぎ。それぞれがレースをサカナに楽しんでいる」

 そう聞いてイメージしたのは、年に1度、夏や秋にみこしが街中をめぐり、境内で露店がにぎわう神社の祭りだった。

 「沿道には、自宅の庭でソファベンチに背を預け、『また1年、無事に過ぎたね』と祝いながら日がな一日、目の前を走り抜ける車を見ているお年寄りたちがいる」

 そんな話を聞かせてくれたのは旧知のジャーナリスト。本当に花見と同じ感覚だ。それほど欧州ではレースが文化として浸透しているのだと、うらやましく感じた。日本で近いのは鈴鹿のF1日本GPか二輪の鈴鹿8時間耐久だろうが、まだそこまでとはいえまい。

 不動産会社「ルーフ」の木村武史社長は昨年、自らのチームを率いてルマン初出場。金曜日恒例のドライバーによるルマン市内パレードに参加した際の驚きを、「こんなに人がいるのかと思うほどの人波でした」と振り返っている。競技参加者だけでなく、観客、さらにはルマン市の人々すべてが、一つの大きな祭りを作り上げている。

 残念ながら今年はパレードも取りやめとなり、例年のような祭りとはならない。それでも歴史を紡ぐことでにぎわいが戻ると信じたい。決勝は19日午後2時30分(日本時間同9時30分)にスタートする。(只木信昭)