2020.4.1 05:00

【五輪を語る 産経新聞特別記者・佐野慎輔】「友情の大会」再現でコロナ禍に打ち勝て

【五輪を語る 産経新聞特別記者・佐野慎輔】

「友情の大会」再現でコロナ禍に打ち勝て

特集:
五輪を語る 産経新聞特別記者・佐野慎輔

 満開の桜に雪が積もる。32年ぶりの珍事は混乱か、慶事の象徴なのか。

 2020年東京オリンピック・パラリンピックは来夏の開催となる。東京の新型コロナウイルスの感染拡大、世界の趨勢(すうせい)を考えれば中止回避で済んでよかったと思う。

 120年を超えるオリンピックの歴史のなかで初の延期は、辛い1年となろう。どう乗り越えるか、我慢のしどころ、知恵の絞りどころである。

 1948年ロンドン大会はオリンピックの存亡をかけた大会であった。40、44年大会が戦争により中止。世界は疲弊していた。戦後初開催を引き受けたロンドンも中心部に空襲の跡が残り、食糧事情は悪化、物資不足が続いた。財政は困窮し、英国内には憤懣(ふんまん)が渦巻くありさまだった。

 当時のアトリー政権は窮地に際し、国際連合英国代表で20年アントワープ大会陸上1500メートルの銀メダリスト、フィリップ・ノエル=ベーカーを担当相に任命した。

 「オリンピックをロンドンで開く以上、成否には国家の名誉がかかる」

 後に軍縮でノーベル平和賞を受賞するベーカーは閣内の意思を統一。節約に励むと同時に軍や大学に人材、物資、施設の提供を求め、国鉄や軍需省、食糧省を督励した。

 「ロンドンが開催できなければオリンピックは地上から消える」-危機意識は諸外国に波及。スウェーデンが施設改修に必要な木材を提供し、アルゼンチンは馬術の馬、オーストラリアやカナダは食料を送ってきた。ロンドンが「友情の大会」と言われるゆえんである。

 来夏の東京も、世界が英知を結集して“新しい戦争”に打ち勝った祝祭の大会でありたい。