2020.3.25 05:02

【解説】IOCの伝統覆した…選手らの反発

【解説】

IOCの伝統覆した…選手らの反発

この日の国立競技場。五輪の会場として使用されるまで約1年先延ばしとなった (共同通信社ヘリから)

この日の国立競技場。五輪の会場として使用されるまで約1年先延ばしとなった (共同通信社ヘリから)【拡大】

 国際オリンピック委員会(IOC)が中止という最悪の事態を回避し、伝統を覆す決断を下した。夏季五輪の中止は戦争の影響で過去3度あるが、巨大ビジネスに成長した今、中止がもたらす莫大な経済的損失や五輪ブランド低下のリスクは計り知れない。新型コロナウイルス感染が欧米スポーツ界も直撃する非常事態で通常開催に選手らの反発が強まり、IOCには事実上、延期の選択肢しかなかった。

 1896年アテネ大会から始まった近代五輪は、古代五輪の慣例を継承して「オリンピアード」と呼ばれる4年周期の最初の年に開催すると五輪憲章で定められ、スポーツを通じて世界平和を発信する理念がある。ただ強行すれば選手らの健康や安全を保証できないだけでなく、大規模ボイコットにつながりかねない。近年は開催コスト高騰で招致熱が冷え込む中、1年程度延期の判断は、憲章に定められていない異例の措置を取ってでも「五輪の価値を守る」という選択を迫られた形だ。

 IOCに巨額の放送権料を支払う米テレビ局のことを考えれば、欧米プロスポーツと開催時期が重なる年内への延期は困難。チケット収入の損失が大きい無観客での開催は祝祭ムードも色あせ、選手第一の観点からも現実的ではなかった。

 問われるのは延期に伴う今後の対応だ。日程調整や会場確保、膨らむ追加コストなど課題は山積する。各競技で既に代表に決まった選手をどう扱うのか、選考をやり直すのかという難題もある。不測の事態で選手第一の原点に立ち返り、迅速な対応が求められる。

  • 東京五輪開会式までの日数を示すボード。これも“約365”日が加わる形に…(撮影・萩原悠久人)