2019.9.16 17:27

【すぐそばに東京五輪(8)】白熱のMGC 敗れたランナーにも評価を

【すぐそばに東京五輪(8)】

白熱のMGC 敗れたランナーにも評価を

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すぐそばに東京五輪
力なくフィニッシュする井上大仁

力なくフィニッシュする井上大仁【拡大】

 声音が勝者と敗者のコントラストを描き出した。五輪切符をつかんだ前者は弾み、逃した後者は沈む。一発勝負の「マラソングランドチャンピオンシップ」。東京へのスタートラインに立ったのは男女40人で、各上位2人が代表に決まった。

 初めて日の丸を背負う男子の中村匠吾は、レースから一夜明けた16日が誕生日。「おかげさまで27歳をいい日に迎えることができました」。寡黙なランナーの声は明るかった。

 選考会をくぐり抜けた男子31人、女子12人が出場予定だった。欠場は男女で3人。日本陸連の河野匡・長距離・マラソンディレクターはこうみる。「今までのレースからすれば(欠場の)率は低い。用意周到で臨めたのかな」。こけた頬に焼けた肌。その姿が一発勝負にかける覚悟を物語った。

 気温30度近い消耗戦。途中棄権した4人を含め、36人が涙をのんだ。男子3位の大迫傑は5秒、女子3位の小原怜は4秒差で切符に届かず。ラスト1キロの男子のつばぜり合いは見応え十分。名勝負だった。

 「自分はこんなもの」。男子「4強」の一角と目されながら、序盤で先頭争いから離脱した井上大仁の声は、消え入りそうだった。完走した27選手中最下位。米コロラド州ボルダーでの高地合宿では気温30度超のなか走り込み、仕上げてきたはずだった。代表切符は残り1枚。可能性は残されるが、「今は何も考えたくない」と瞳を伏せた。

 「選手たちの頑張りに、言葉が出ないくらい感謝している。敗れ去ったメンバーに飛躍してほしい。36人のサポートを考えていきたい」とは河野ディレクター。光が降り注げば降り注ぐほど、影は濃く長くなる。敗れたランナーの42・195キロにも、努力の証がある。(鈴木智紘)