2019.8.19 14:31

【すぐそばに東京五輪(4)】40分で塗り替えられた日本新 橋岡優輝がのぞかせたトップジャンパーの自負

【すぐそばに東京五輪(4)】

40分で塗り替えられた日本新 橋岡優輝がのぞかせたトップジャンパーの自負

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すぐそばに東京五輪
日本新記録を出した橋岡優輝

日本新記録を出した橋岡優輝【拡大】

 執筆の方針転換を迫られていた。走り幅跳びの橋岡優輝が8メートル32で日本記録保持者だったのは、わずか40分間。この記録を8センチ上回った城山正太郎に称号を奪われた。競技が熱を帯びたのは午後7時頃。場内の芝生に腰を下ろし、最初の締め切りに間に合わせようと「橋岡日本新」の原稿を書いている矢先の出来事だった。

 17日、福井で繰り広げられたデッドヒートだった。100メートルの桐生祥秀が2017年に9秒98の日本記録を出した県営競技場が舞台で、「9・98スタジアム」の愛称がつく。2年ぶりにこの競技場で誕生した日本新に沸き立つ観客を横目に、大きな放物線を描いた橋岡は首をひねっていた。

 「つんのめった感じのジャンプでした。意外に出ちゃったなと」。追い風参考だった1本を含め、6度の試技のうち5本で8メートル10を超えた。一方、城山は3本目で日本新を出した後は脚の張りなどを理由に跳躍を見送った。

 橋岡は18年のU20世界選手権を制し、今年4月のアジア選手権でも王者に。6月の日本選手権では3連覇を飾った。「これだけ跳べたから、もっと跳べる。アベレージの高さをもっと評価してほしい」。心なしか早口になった口調に、トップジャンパーとしてのプライドが垣間見えた。

 何より、日大で指導を仰ぐ森長正樹コーチが保持した日本記録を27年ぶりに更新した誇りがあった。「恩師の記録を超えられて、素直に良かった。一番に超えられたことが重要ですから」

 24歳の城山、21歳の津波響樹とともに、東京五輪の参加標準記録の8メートル22を突破した。若き競争は激しさを増すばかり。「うれしさはゼロ。負けて記録も持っていかれた。でも悔しさは成長につながる」。師を超えた感慨、好敵手に日本記録をさらわれた後悔。40分間に交錯した感情が、20歳の進化の糧となる。(鈴木智紘)