2019.8.5 12:00

【すぐそばに東京五輪(2)】設楽悠太「五輪は一つの大会」言葉の真意は

【すぐそばに東京五輪(2)】

設楽悠太「五輪は一つの大会」言葉の真意は

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7月に北海道・紋別市内で兄・設楽啓太(左)との合同練習を公開した悠太

7月に北海道・紋別市内で兄・設楽啓太(左)との合同練習を公開した悠太【拡大】

 取材エリアは混沌(こんとん)としていた。さきの競泳・W杯東京大会で、不調による休養から萩野公介が実戦復帰した。試合に臨むのは実に5カ月半ぶり。テレビインタビューでは、各局があの手この手で注目のレースを終えた競泳界の顔の言葉を引き出そうとしていた。

 「東京五輪まで1年を切った心境は」「今の東京五輪の位置づけは」「改めて東京五輪での目標は」。萩野は質問の一つ一つに思案をめぐらせながら、空白の期間で見つめ直した自身の競泳競技観を交えて丁寧に胸の内を明かした。

 トップアスリートが必ずしも自国開催の祭典に深いこだわりを持つわけではない。男子マラソン前日本記録保持者の設楽悠太は事もなげに言う。「東京五輪に全く興味がないわけではないけど、一つの大会だと思っています」。五輪開幕まで1年を切ったばかりの7月26日の取材でも、これまで示してきた姿勢はぶれなかった。

 なぜ、そう思えるのか。設楽は続ける。「そんなに東京五輪と考えすぎると、五輪が終わってから一気にスイッチが切れてしまう。五輪に出たいというのはあまり深く考えず『出られたら良いな』くらいの感覚の方がいいと思う」。聞き手として、もっぱら東京五輪一辺倒になっていないか。そう自問自答させられる考え方だった。

 睡眠時間は基本3時間。35キロ以上の走り込みはしない。設楽には意志を貫く強さがある。マラソンを近くに控えて臨むレースへの姿勢に、それは表れる。トラックでもハーフマラソンでも死力を尽くす。強化の一環という位置づけではない。「厳しい言い方をすると、こっちは全力で走るのに練習の一環で出る選手がいれば、同じスタートラインに立ちたくない」と語気を強める。

 冒頭に話を戻す。萩野は本格的な練習を再開してから1カ月弱。約3カ月の休養時には体重がベストから5キロほど重い77キロとなったが、このわずか1カ月で5キロ近くも減ったという。「1年もあれば、人間なんでもできる」。刹那を生きる選手たちが、確かにいる。(鈴木智紘)