右拳を高々と上げる田中。異色のリングドクターがプロデビュー戦をTKO勝ちで飾った(撮影・田村亮介)【拡大】
プロボクシング(6日、後楽園ホール)日本ボクシングコミッション(JBC)のリングドクターを務める脳外科医、田中将大(まさひろ、29)=川崎新田=がミニマム級4回戦でプロ初のリングに立つと、瀬下雄介(27)=協栄=に1回25秒TKO勝ち。米大リーグ、ヤンキースの田中将大投手(30)と同姓同名で同学年の医師が、鮮烈なデビューを飾った。
メジャー級のデビュー戦だ。ゴングとともに走り出した田中は大振りの右フックを放つ。最初の一撃でダウンを奪うと、左右のフックでTKO。喜びもつかの間、相手コーナーで「気持ち悪くないですか?」と“診察”を始めた。まさに異色のボクサーだ。
「(リングサイドで)3桁の試合を見て、デビュー戦の選手は足首、膝が硬いので一発当てようと狙っていた」
会心の勝利は職務上の経験から生まれた。聖マリアンナ医科大を卒業後、2015年に上司の勧めでリングドクターとなった。月に2度会場に足を運び、選手の健康状態をチェック。切った傷を縫合する中で「選手の気持ちが分かるようになりたい」と一念発起し、16年に川崎新田ジムに入門。多忙な生活でプロテスト合格までに1年半を要した。
当直、急患、緊急手術…。仕事に忙殺され、デビュー戦をあきらめかけていた。昨年4月に常勤の病院を辞め、準備を整えて念願のリングに立った。「恐怖心もあったけど最高の景色だった。これからも続けたい」。医師、選手と2つの視点からボクシングに向き合う。(伊藤隆)
★リングドクター
JBCではコミッションドクターと称する。試合の前日計量で検診、試合当日はリングサイドで傷などを診断し、試合中止の勧告ができる。別のコミッションドクターが医務室で試合後のチェック、傷の処置、縫合などにあたる。東日本ではJBCが提携する病院を中心に約100人を数える。
田中 将大(たなか・まさひろ)
1989(平成元)年3月6日生まれ、29歳。東京・八王子市出身。暁星国際高、聖マリアンナ医大で剣道部主将を務める。卒業後は沖縄、川崎、福島、町田などの病院に勤務。2015年からリングドクターを務める。17年7月にプロテスト合格。162センチ。右ファイター。得意パンチは左フック。夫人のうみさん(30)も眼科医でリングドクター。