2018.12.8 05:04

【記者の目】付け人の慣習、部屋制度限界の指摘には疑問

【記者の目】

付け人の慣習、部屋制度限界の指摘には疑問

貴ノ岩・暴行からの経過

貴ノ岩・暴行からの経過【拡大】

 長い歴史を、局面だけ切り取ってあげつらう気にはならない。貴ノ岩が付け人を殴って引退へ追い込まれたが、これで付け人の慣習や部屋制度の限界を声高に指摘するのは疑問だ。「悪貨」は個人に帰結するものだと思うからだ。

 若い世代で台頭する幕内阿炎は十両から幕下に陥落したとき、まげを切るつもりだった。そこで横綱鶴竜の付け人につく。アドバイスやきぜんとした立ち居振る舞いを見て、感激。引退をとどまった。ベテランの十両安美錦は15年半付け人を務めてくれた元幕下力士が引退した際、支度部屋で感謝の言葉を並べ涙をこぼした。こんな絆は、いくらでもある。

 3月の春場所中、旧貴乃花部屋に所属していた当時十両の貴公俊(たかよしとし)が付け人に暴行。貴ノ岩のこの弟弟子は春場所を自主的に謹慎して途中休場。協会は5月の夏場所を1場所出場停止処分とした。引退しなければ、貴ノ岩の処分でもこうした前例が考慮されただろう。

 だが元横綱日馬富士も暴力の引責で引退した。今回の引退で力士らに「暴力行為=引退」という心理的な“罪刑法定主義”が刻み込まれたとしたら、意味のある決断だった。 (奧村展也)