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【乾坤一筆】現代アスリートの告発に幕末の志士を感じる

【乾坤一筆】

現代アスリートの告発に幕末の志士を感じる

特集:
ベテラン記者コラム・乾坤一筆

 江戸時代。普遍的秩序志向の体制を形づくる「朱子学」が官学にあった。身分や理気二元論を重視し自然や万物に備わる上下関係、尊卑を人間社会にも求め、礼を尽くし主君に従うことを説いた。知識や学問と行動の関係は、あくまで理が優先。「先知後行」を尊んだ。

 尊皇攘夷運動が起こった幕末。そこに身を置いた西郷隆盛、吉田松陰、高杉晋作、河井継之助、佐久間象山らは朱子学から離れた「陽明学」に強い影響を受け、バックボーンに据えた。知ることと行いは万人が心にもつ先天的な道徳「良知」から発する作用であり、「どれほど知識があっても、行動が伴わなければその知識は無駄である」とする「知行合一(ちぎょうごういつ)」を原理とした。

 自らの道徳に合わせて包まれていたベールをはいだ現代のアスリートには、陽明学的発想を感じてしまう。

 2012年ロンドン五輪男子ボクシングのミドル級金メダリストでWBA世界同級王者・村田諒太(32)=帝拳=が自身のフェイスブックで、助成金流用や不正判定疑惑などで揺れる日本ボクシング連盟を言及した一節にはこうあった。「悪しき古き人間達、もうそういう時代じゃありません」。いにしえの幕末の志士も、きっとこう叫んだに違いない。

奥村 展也(おくむら・のぶや)

 1993年入社、一般スポーツ、ボクシング、大相撲などを担当。格闘技班、運動部、みちのく版各デスクを経て編集委員。毎日が青息吐息の「4th Down ギャンブル」。綱渡りで前進の日々。