2018.4.4 10:00

アジサイの新芽に稀勢の復活を思う

アジサイの新芽に稀勢の復活を思う

特集:
女子社員コラム 言わせて系
稀勢の里

 【女子社員コラム 言わせて系】地方出身の人間にとって、大相撲のご当地力士は特別なものだ。その活躍を見ると、同じように東京で頑張っている人がいるのだと元気づけられる。

 上京して6年、私は同じ茨城県出身の横綱稀勢の里と大関高安に励まされてきたが、このところ相撲関連でニュースになるのは、土俵外の悪い話ばかり。稀勢の里の不調だけでも気がめいるが、連日のスキャンダルで私のモチベーションも下がり続けている。今までは1日も欠かさず情報をチェックしていたが、日に日に見るのも辛くなっていった。

 相撲に対する“憎しみ”が深まる一方、きっぱりと縁を切るわけにもいかなかった。2月に行われた日本大相撲トーナメントのチケットを、元横綱日馬富士の暴行問題に端を発した騒動が起こる前に購入していた。実際に観戦すれば気持ちも収まるはずだと自分に言い聞かせ、私は両国国技館に向かった。

 しこ名が書かれた幟(のぼり)を見るだけでやはり胸が弾む。きっちりと結われたまげや立派な体、びん付け油の甘い匂いには非日常的な魅力があり、頭がくらくらした。十両の取組が終わると横綱土俵入りだった。トーナメントにも出場している白鵬が不知火型を披露すると、ひときわ大きな拍手が鳴り響いた。

 さすがの人気だが、鶴竜を含めて3人も横綱がいるのに、1人の土俵入りしか見られないのは寂しいものだ。立ち去る白鵬の背中を見つめていると館内がざわついた。漫画「北斗の拳」のキャラクター、ラオウの化粧まわしに白い綱を締めた稀勢の里がいたのだ。その姿を見た瞬間、自分の気持ちが昇華していくような気がした。

 それから数日後、自宅のベランダに出てみると昨年購入したアジサイの新芽が出ていた。冬のアジサイは葉が落ち、枯れたようになる。雪の日も屋外に出していたので駄目かもしれないと思っていたが、これから手をかけていけば、また夏頃には紫色の美しい花が咲くだろう。明るい緑色の芽を見ていると、冬を乗り越えることができたという安心感とともに、稀勢の里のことが思い出された。

 昨年春場所で優勝して以降、休場を繰り返し、進退を問われている。長い冬の真っただ中だ。しかし心技体の「芯」が保てればチャンスはある。また咲く季節が来る。そう信じて稀勢の里の復活を待っていたい。(川並温美)