2017.10.10 19:21

リオ金の田知本遥、指導者の道を希望「どん底も味わった経験を伝えたい」/柔道

リオ金の田知本遥、指導者の道を希望「どん底も味わった経験を伝えたい」/柔道

現役引退を決め、会見に臨んだリオデジャネイロ五輪柔道女子70キロ級金メダリストの田知本遥=東京・港区のALSOK本社

現役引退を決め、会見に臨んだリオデジャネイロ五輪柔道女子70キロ級金メダリストの田知本遥=東京・港区のALSOK本社【拡大】

 リオデジャネイロ五輪の柔道女子70キロ級金メダリストで4日に現役引退を発表した田知本遥(27)=ALSOK=が10日、東京都内で記者会見し、将来的には指導者となりたいと今後の目標を語った。

 「ゆっくり考えることができ、悔いのない決断ができました」と田知本。リオ五輪後は休養し、現役続行か引退かを検討し続けていた。今年6月、地元の富山県で行われた全日本実業団団体対抗で、リオ五輪以来となる試合に出場。ALSOKの2部優勝に貢献したが、最後の決勝戦で一本勝ちしたこともあってか「終わったとき、次への気持ちがわいてこなかった。『もっとやりたい』という気持ちがなく、『これは、そう(引退すべきと)いうことなのかな』と思った」と、引退を決めるに至った状況を説明した。

 20年の現役生活は「すべてをかけて、一つのことを求めてきた日々だった。きついことの方が多かったが、立ち向かう自分が好きだった」。初出場した2012年ロンドン五輪では7位と惨敗。「当時は勝つことがすべてと思っていて、(敗れて)何もかもを失ったと思っていた」。15年には国際大会直前に禁止薬物が含まれている市販の風邪薬を服用し、ドーピング違反の判定を避けるために強制的に帰国させられるトラブルもあった。

 そうした苦難を乗り越えてリオで優勝したときは「『やったあ』とか『メダルだ』とかじゃなく、これまでのすべてが報われた、やってきたことが大切だったんだと静かに思い返していた」と人生最高の瞬間を振り返った。

 また、14年の講道館杯で優勝した試合についても「一か八かで準備して臨み、優勝したときは、神様が『リオの一番高いところを目指しなさい』といっているんだと感じた。あれがなければリオはなかった」と感慨深げに話した。

 9月には決断を会社に報告。同じ所属で幼い頃から苦楽をともにしてきた姉の愛(28)にもそのころ伝えたという。姉から直接言葉は掛けられなかったそうだが、姉はこの日の会見に合わせて「一緒に柔道を始めて、小さい頃から理解し合える仲間であり、一番近くにいるライバルだった遥が先に引退することに、まだ実感がわきません。最後に一緒に柔道を始めた土地で団体戦を組めたことは、いい思い出になりました。どん底な時もあったと思うけど、そこからはい上がる姿、最後は自分の最大の目標を達成する姿は忘れられません。本当にお疲れ様でした」とするコメントを発表した。

 「これを読んで、グッときました。全部の流れを分かってくれている人が行ってくれているんだなと感じました」と感無量の表情を見せた。

 この4月に筑波大大学院に入学。人間総合科学研究科でスポーツ健康システムマネジメントを専攻している。「テーマとしてやりたいのはオリンピズムやオリンピック教育。恥ずかしながら私自身(五輪の歴史を)知らなかったし、五輪の舞台に立つ前に知っていたら、あそこで見える景色も違っていたのかなと思う」と研究に意欲を示す。再来年の3月に卒業予定で、その先は「柔道に携わっていきたい目標はある。まだまだ勉強しないといけないが、指導者をやってみたい。単に勝利を求めるだけでなく、もっと広い視野で打ち込めるように教えられる指導者になりたい」。苦も楽も味わった自身の経験を後進に伝えたいという。

 女子70キロ級では現役時代のライバルだった新井千鶴(23)=三井住友海上=が今年の世界選手権で優勝。「日本の柔道は歴代の強い先輩がいて、私も刺激をもらい、そうなりたいと道を歩んできた。私がリオで勝ったことで(新井には)悔しい気持ちもあると思う。それを次につなげ、強い日本という存在を継続してほしい」と期待を寄せた。

  • 現役引退を決め、会見に臨んだリオデジャネイロ引退会見で、後輩での女子78キロ級前世界女王の梅木真美から花束を受け取る田知本遥(右)=東京・港区のALSOK本社