2015.3.30 17:39

9秒87の桐生が帰国「外国人に勝てたのは大きい」/陸上

笑顔で帰国した東洋大学・桐生祥秀=成田空港(撮影・小倉元司)

笑顔で帰国した東洋大学・桐生祥秀=成田空港(撮影・小倉元司)【拡大】

 米テキサス州オースティンで28日に行われた陸上のテキサス・リレー男子100メートルで、追い風参考ながら9秒87をマークした桐生祥秀(19)=東洋大=が30日、アメリカン航空便で成田空港に帰国した。出迎えの報道陣に驚きながらも「まずは公認記録をしっかり出さないと」と浮かれることなく話した。

 「ずいぶん盛り上がってるなあ」。帰国した桐生が、ずらりと並んだテレビカメラを前に、少し驚いた表情を見せた。

 国際陸連によると9秒87は、風などの条件に関係なくアジア選手が出したタイムとしては過去最速。「(現地でタイムを出したときは)日本人が9秒台ということで盛り上がったけど、ここまでとは…」と桐生。

 レース後、ミニブログのツイッターや無料通信アプリのラインなどで多くの祝福の言葉を受けたが、「『次は公認で』といわれた。今回は追い風参考の9秒台なんで、次はしっかり」。落ち着いた表情で話す。

 レースでは「いい感じでベストが出るかと思ったけど、9秒8とは思わなかった」と振り返る。「思い切って出られて、いつも以上に前半の加速がうまくできた。スターティングブロックの位置を変えたのがはまった」。ブロックの間隔を従来より10センチほど広げたことで「1歩目が出やすくなって、1、2歩目がスムーズにいくようになった」と話し、「冬季にしっかり走り込みできた」とトレーニングの成果を実感した。

 東洋大進学から1年。「去年は高校からの流れを崩さないようにして、故障にも対症療法しかしなかった」とは土江寛裕コーチ(40)だ。昨秋に故障したため早めにシーズンを切り上げると、冬季トレーニングから「私の考えを入れてやってきた」。軽めの重りを持って負荷をかけながら走りの動きをするなど、京都・洛南高時代にはあえて行わなかったウエートを使ったトレーニングを少しずつ取り入れた。

 男子100メートルの日本記録保持者、伊東浩司氏に師事してストレッチを習うなどし、「ストライドが効くような動きを自然にできるようトレーニングをさせた」と土江コーチ。当初、桐生は「コーチの言っていることが分からない」と不安も抱いていたが、今月上旬のグアム合宿から求める動きができるようになったという。

 「外国人に勝てたのは大きい」と桐生。レースでは、2012年ロンドン五輪400メートルリレー銀メダリストのライアン・ベイリー(米国)や、13年モスクワ世界陸上で同種目銀メダルのチャールズ・シルモン(同)に競り勝った。「海外の雰囲気に慣れたのは大きい。経験を積んで、海外選手に負けないという自信がついてきた」という。

 「(9秒8で走ったという)走りの感覚は強烈に残るでしょう。しかも海外で、黒人の速い選手何人かがいる中で出せたというのは重要な印象として彼の中に残るはず」とは土江コーチ。レース後の痛みなどが出ていないことから「9秒8のスピードに体が対応できている」と手応えを語り、「この方向で行けばいいと、私自身にも自信になりました」という。

 「9秒8まで出たら、次は10秒1じゃ満足してもらえないな」と桐生。「(世界選手権や五輪という)世界大会で、こういう走りをしないと決勝は狙えない」と気を引き締め直す。次は織田記念(4月18~19日、広島)に出場予定。その後、関東インカレやゴールデングランプリ、日本選手権(6月26~28日、新潟)が待つが、本番は8月の世界選手権(北京)だ。「時間があるのでしっかり走りたい。100メートルと200メートルで日本新を狙いたいし、世界選手権ではけがなく、ラウンドを重ねたい」と、地道に前を見据えた。