JOCよ、責任を持て

五輪を語る 産経新聞特別記者・佐野慎輔
8月29日に会見を開いた宮川。騒動はまだ収まりそうにない

 なぜ、動かない。

 レスリング、ボクシング、バスケットボールに剣道、体操。準加盟のアメリカンフットボールも含めて、加盟競技団体の一連の不祥事に、日本オリンピック委員会(JOC)から明確な方向性を示す意思表示すらない。

 もちろん、JOCは指示、命令する権限など持ちはしない。だからといって、それぞれの団体に任せて傍観する、それでいいとは思わない。

 自主性重視とは、無責任と表裏ではない。

 JOCは、「アスリートの育成・強化」「国際総合競技大会の派遣・招致並びに国際化の推進」「オリンピズムの普及・推進」と3つの役割を掲げ、「役割」を果たすため、5つの「活動」を相互に連動させながら進める、と定める。

 活動1「選手強化」に続く、活動2は「アスリート支援」である。アスリートが競技に専念できる環境の整備をうたう。ならばアスリートの環境に敏感であってほしい。指導者とアスリートとの軋轢(あつれき)はJOCの直接行動の範疇(はんちゅう)ではないのか。

 このコラムはオリンピックがテーマだからJOCに注文をつける。だが日本スポーツ協会(JSPO)も同様だ。ようはガバナンス(組織統治)やコンプライアンス(法令順守)に鈍感な競技団体を指導すべき統括組織の腰が引けている。

 それを知ってか、不信感からか。被害を受けたとするアスリートたちはスポーツ界の組織ではなく、国に直接訴える手法を取り始めた。その方が大きく報道されて話題になり、世論を喚起する。問題解決への近道かと考えたのかもしれない。

 一方、スポーツ議連では続く不祥事を問題視、指導権限を含め、国の関与の仕組みを検討していくという。スポーツ界はそれでいいのか。

 1989年、JOCは日本体育協会(いまのJSPO)から分離、独立した。建前の理由はともかく、1980年モスクワ大会ボイコットを巡る政府の介入に、「スポーツの自主独立」を旗印として起こした行動である。

 気概が残っていれば、2020年をも揺るがす不祥事に、手をこまねいているはずはない。まず語れ、動け。それがJOCの役割だろう。

 もしJOCに担当部署や人手がないなら、JSPOと再合併してもいいではないか。

 その方が船頭の多いスポーツ界もすっきりすると思うが…。

佐野 慎輔(さの・しんすけ)

 1954(昭和29)年生まれ、64歳。富山・高岡市出身。早大卒。スポーツ記者歴30年。五輪を5大会取材。産経新聞運動部長やシドニー支局長、サンケイスポーツ代表などを経て、2014年6月から現職。日本オリンピックアカデミーや笹川スポーツ財団の理事も務めている。

Read more