波田悠貴、2020東京で世界の頂上へ/スポーツクライミング

サンスポ×日体大
練習拠点とする埼玉・春日部市のエナジークライミングジム春日部店で練習に打ち込む波田(右)。島崎編集長は撮影もこなした (撮影・大橋純人)

 2020年東京五輪開幕まで、5日で750日。出身大学別最多の夏季五輪メダリスト62人を輩出している日体大とコラボレーションした長期連載の第8回は、年4回発行されている「日体大スポーツ」の島崎拓也編集長(22)=体育学部社会体育学科4年=が登場。スポーツクライミングの期待の星、波田(はだ)悠貴(21)=体育学部社会体育学科3年=を直撃した。学生同士のインタビューだからこそ見えてきた強さの秘密とは-。

 新種目のスポーツクライミングは、もともと欧州発祥といわれるが、近年は日本国内においても日を追うごとに注目度が高まっている。

 そんなスポーツクライミングの世界に波田が足を踏み入れたのは、小学3年の時。偶然訪れたアミューズメント施設でクライミング用の小さな壁に登り、幼いながら競技の面白さや奥深さに触れたことがきっかけだったという。

 「体を動かすことが好きだったので、スポーツに関する勉強をしてみたいと思っていた」

 幼なじみでもあり国体でペアを組んだ仲間でもある2つ年上の先輩・是永敬一郎(2017年児童スポーツ教育学部児童スポーツ教育学科卒)の後を追い、日体大へ進学。是永と同じ山岳部に入部し、仲間たちと切磋琢磨(せっさたくま)しながらメキメキと力をつけた。

 昨年7月にはフランス・シャモニーで開催されたIFSCクライミングW杯のリード種目で銅メダルを獲得。勢いそのままに、直後のワールドゲームズ(ポーランド)でも2位に輝くなど、国内から世界へと活躍の舞台を広げていった。同8月には左膝の靱帯(じんたい)を負傷も「リハビリ中も自由に動かせる右足と上半身のみで練習していたのでバランス感覚を養えた」と逆境をも力に変えることで進化を続ける。

 「日体大にはアスリートをサポートするために必要なものがそろっている」と波田。体の仕組みや栄養に関する数多くの授業はもちろん、いつでも利用可能なトレーニングセンターや学問と競技の両立をサポートする公認欠席制度など、あらゆる面で大学は選手たちを支える。その充実した環境こそ、多くのオリンピアンを輩出し続ける日体大の礎だ。

 東京五輪は、リード、ボルダリング、スピードの複合で争われる。必要とされる能力や戦略が大きく異なるため「種目やホールドの配置によって選手にも得意不得意があり、誰にでも勝機はある。五輪にはもちろん出たい。ただそのためには(得意の)リード以外の種目でも結果を残す必要があるし、課題は多い」と自身の現状を冷静に分析する。

 練習施設の数においても競技人口においても日本をしのぐ欧州諸国は、金メダル候補の筆頭。それでも波田をはじめとする日本選手が波乱を巻き起こし、表彰台の中央に立つ姿を期待せずにはいられない。(日体大・島崎拓也)

★島崎編集長イチオシアスリート

◆水球・荒井陸(2016年体育学部体育学科卒)

 「先日行われた世界3大大会に数えられるワールドリーグスーパーファイナルで4位に輝き、2020年のメダル獲得が期待される水球『ポセイドンジャパン』。その得点力でチームに貢献する荒井選手の『努力する才能』は過去にインタビューしてきた多くのアスリートの中でも群を抜いていたので、個人的に期待しています」

◆レスリング・樋口黎 (2018年体育学部体育学科卒、現日体大助手)

 「大の甘党。リオ五輪では2位に輝いた『マカロン王子』。五輪後、増量して階級を上げてからは思うような結果を残せていませんが、今年6月の全日本選抜選手権では65キロ級として初めて決勝進出を果たすなど、復活への兆しは見せています。大学在学時もけがや減量の失敗を乗り越えて栄冠を勝ち取っているので、東京の舞台で前回大会の雪辱を果たすべく逆境をはねのけてほしいです」

◆パラ陸上競技・重本(旧姓・辻)沙絵(2017年体育学部体育学科卒、現日体大大学院)

 「大学時代にハンドボールからパラ陸上へと転向した異色の経歴の持ち主。リオ大会での銅メダル獲得という実績からもそのポテンシャルの高さを十分に感じさせます。実際、国内の大会では今や敵なしですが、世界の舞台では『優勝』という結果は得られていません。だからこそ、2020年東京大会は持ち前のハングリー精神で更なる活躍を見せてくれるはずです」

★スポーツクライミング

 スピード、ボルダリング、リードの3種目がある。スピードは高さ15メートルの壁を登り、その速さを競う。ボルダリングは高さ約3~5メートルの壁にさまざまな形のホールド(突起物)が設置され、複数の課題(コース)に挑んで完登した数を争う。制限時間内に到達した高さを競うリードは壁の高さが12メートル以上で、ルート途中にある金具にロープをかけて安全を確保しながら登る。2020年東京五輪は3種目の複合で行われ、各種目の順位を掛け合わせたポイントの少ない選手が上位になる。

★スポーツクライミング・東京五輪への道

 選考方法は決まっておらず、波田は「とにかく結果を残していくだけ」と目の前の試合に集中する。開催国枠として男女それぞれ2人の計4人は出場できることが決まっている。海外で活躍する日本選手は多く、男子では日体大を昨年卒業した是永敬一郎(22)や楢崎智亜(22)、女子では野口啓代(29)、野中生萌(みほう、21)らが最もカテゴリーの高い日本のS代表として活躍する。

波田悠貴(はだ・ゆうき)という男

 ★生まれ 1997(平成9)年5月10日、21歳。埼玉・春日部市出身。
 ★クライミング歴 小学3年から競技を始め、17年ワールドゲームズのリードで銀メダル。
 ★身長 1メートル65。
 ★ゲン担ぎ 大会前日の夕食と大会当日の朝食で、米を中心に食べること。
 ★好きな言葉 マイ・ペース。
 ★趣味 身体を動かすこと。
 ★オフの過ごし方 大学や地元の友人と遊んでリフレッシュ。
 ★好物 すし。お米が好き。海外遠征にはわざわざ持っていくことも。
 ★握力 53キロ。「決して強い方ではない」。
 ★憧れの人 2015年ボルダリング・ジャパン杯王者の杉本怜(26)。「試合直前でも和やかな雰囲気で話しかけてくれたりもするのに、強い」。
 ★自分の性格を一言で表すと おとなしい。控えめ。
 ★今、伝えたいこと 「五輪に出場できる選手は限られているが、日本には個性豊かな実力者がたくさんいる。2020年までにぜひ、この競技をもっと知ってもらいたいしもっと見てほしい」。

日体大スポーツ

 1999年創刊。学友会総務部(日本体育大学学友会に所属する76団体を統括。大学、学友会の更なる発展のため、さまざまな活動を行う。現在、部員は7人。新入部員も募集中)内の日体大スポーツ編集局により年間4回(4、9、1、3月)発行。本学のクラブ・サークルの活躍のみならず、団体に所属していない一般学生や卒業生に迫る企画も充実。最新の4月号ではライフセービングの田中綾を1面で掲載した。次回は9月21日、節目の第80号を発行予定。島崎編集長いわく「日体大生ならではの視点で撮影した写真と書いた記事が最大の特徴」。

島崎 拓也(しまざき・たくや)

 1996(平成8)年6月15日生まれ、22歳。千葉県出身。千葉・東金高卒。日本体育大学体育学部社会体育学科4年。学友会総務部所属、学友会総務部内日体大スポーツ編集局18代目編集長。日体大スポーツの取材や制作に加え、さまざまな大学行事の企画や運営に携わる。趣味はサイクリング、サウナ巡り。1メートル64、55キロ。

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