2021.3.26 12:00

【ベテラン記者コラム(125)】日本代表が泊まったホテルでは…タイの小さな町で“アウェーの洗礼”

【ベテラン記者コラム(125)】

日本代表が泊まったホテルでは…タイの小さな町で“アウェーの洗礼”

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アルゼンチン戦に向け、最終調整するU-24日本代表の久保建(中央)ら=25日、千葉市内

アルゼンチン戦に向け、最終調整するU-24日本代表の久保建(中央)ら=25日、千葉市内【拡大】

 サッカーの東京五輪世代、U-24日本代表が活動を再開した。26日に東京・味の素スタジアム、29日にミクニワールドスタジアム北九州でU-24アルゼンチン代表との国際親善試合2連戦が行われる。五輪世代の実戦は2020年1月のU-23アジア選手権以来となる。

 タイで行われたU-23アジア選手権は東京五輪予選を兼ねて行われたが、開催国枠で五輪出場が決まっていた日本は1次リーグ敗退に終わった。サウジアラビア、シリア、カタールを相手に1分け2敗で勝ち点1しか得られなかった。五輪出場権を目指す他国の代表の熱意がいかにすごかったかが分かる。

 一度だけサッカーの五輪予選を取材したことがある。1995年5月に行われたアトランタ五輪のアジア1次予選だ。日本は前園真聖が輝いていた頃で、U-23日本代表を率いていたのは西野朗監督だった。

 試合会場はタイの首都バンコクから車で3時間くらいかかるスパンブリという小さな町にあった。対戦相手は地元のタイ。だからというわけではないのだが、“アウェーの洗礼”らしきものもあった。タイじゅうから泥棒の集団が集まっていたらしく、日本のカメラマンの何人かが機材をごっそり盗まれた。自分もホテルの部屋にいたら、突然警官が踏み込んできて事情を聴かれたから驚いた。

 日本代表が泊まっていたホテルでは、夜になると配管か何かをたたく音が響き続け、選手は気になってろくに寝られなかったそうだ。さらに試合当日には、選手が現金を盗まれる騒ぎも起きた。同じホテルに泊まっていた台湾の選手も同様の被害に遭ったらしい。

 会場はピッチの状態もひどかったが、それでも西野ジャパンは5-0でタイを圧倒。その後もアジア予選を勝ち上がり、1968年メキシコ五輪以来28年ぶりの五輪出場を果たし、本大会では中田英寿らを擁してブラジルを破る「マイアミの奇跡」を起こした。あのスパンブリが第一歩だったかと思うと、感慨深い。

 アジアの強国となりアトランタ五輪から7大会連続出場となる東京五輪。予選が免除された中、U-24日本代表が先輩たちのようなたくましさで勝ち進む姿を見てみたい。(牧慈)