2020.9.25 12:00

【ベテラン記者コラム(48)】28年前にスーパースターが作った“モーゼの十戒”を見た

【ベテラン記者コラム(48)】

28年前にスーパースターが作った“モーゼの十戒”を見た

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9月23日の川崎戦で川崎・レアンドロダミアン(左)と競り合う、横浜FC・三浦=等々力陸上競技場(撮影・蔵賢斗)

9月23日の川崎戦で川崎・レアンドロダミアン(左)と競り合う、横浜FC・三浦=等々力陸上競技場(撮影・蔵賢斗)【拡大】

 人の波が割れるという現象を見たことがある。もう28年近くも前のことだ。

 1992年12月24日、クリスマスイブの夕刻。東京・経堂の高級マンションから出てきたのはサッカー界のスーパースター、カズこと三浦知良(当時読売日本SC)、そして相撲界のスーパースター、貴花田(のち横綱貴乃花)だった。

 ときはJリーグ開幕を翌年の春に控え、カズがスター街道を駆け上がっていたとき。しかも11月12日に人気モデルの設楽りさ子と婚約発表会見を開き、公私ともに絶好調だった。それを上回る存在だったのが当時の貴花田。1月の初場所で最年少優勝を遂げ、9月の秋場所で2度目の優勝。11月の九州場所の直前には人気女優の宮沢りえとの熱愛が発覚、11月27日に婚約会見を行ったが、その後、貴りえ婚約解消か-との報道が出て、注目は過熱する一方だった。

 相撲担当記者は連日、貴花田の動向を追いかけていたのだが、クリスマスイブに朝稽古を終えた貴花田が車で向かった先は青山。ここで宮沢りえと合流したので、芸能担当記者にも連絡して社内は大騒ぎ。2人は経堂に向かい、カズの自宅マンションに入っていた。中では設楽りさ子も待っていて、話題の2大カップルがクリスマスホームパーティーを楽しんだわけだ。

 マンションそばの路上にはテレビ、新聞、雑誌の車がズラリ。やじ馬も大勢集まってきて、閑静な住宅街は騒々しくなっていた。そして、夕方になって冒頭の状況が出現。飲み物が足りなくなったようで、カズと貴花田は近くの商店街でジュースなどを買うために出かけたのだ。

 2人のビッグスターが歩みを進めると、やじ馬の人波が映画「十戒」の有名なシーンのように割れていって、道が出現。それはもう、壮観だった。お酒も入っていた上機嫌の2人は終始笑顔を振りまいて買い物を済ませ、またまたモーゼの十戒でマンションに戻っていった。夜になるとそろってベランダに姿を見せ、貴花田は報道陣の問いかけにも「最高でーす」と応じる大サービス。すべてカズのアドバイスによる演出だった。

 そのわずか1カ月後の93年1月下旬には貴花田と宮沢りえは別々に会見して破局を発表したが、カズと設楽りさ子は8月にめでたくゴールイン。そして、カズは53歳になった今も現役だ。

 8月5日と12日のルヴァン杯に2試合連続でスタメン出場し、同大会の最年長出場記録を53歳5カ月17日へと更新。9月23日のリーグ戦第18節の川崎戦では53歳6カ月28日で先発出場し、13年ぶりにJ1のピッチに立った。後半11分で退いたが、中山雅史の最年長出場記録をまたまた大幅に更新した。

 あのときから28年たち、髪が白くなっても、いまだに明るい話題を提供するカズ。いつまでもスーパースターでいてほしい。(牧慈)