2020.9.12 12:00

【ネクストスター候補(19)】田中美南、代表落ちから新天地でプレーで五輪への思い/サッカー

【ネクストスター候補(19)】

田中美南、代表落ちから新天地でプレーで五輪への思い/サッカー

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ハットトリックを決めた8月30日の愛媛戦で得点後、喜びを表現するINAC神戸・田中美南(INAC神戸レオネッサ提供)

ハットトリックを決めた8月30日の愛媛戦で得点後、喜びを表現するINAC神戸・田中美南(INAC神戸レオネッサ提供)【拡大】

 サッカー女子日本代表のFW田中美南(26)は4年連続得点王となった昨季まで所属した日テレ・ベレーザを退団し、INAC神戸に加入した。昨年のW杯日本代表落選を経て、東京五輪代表のメンバー入りを勝ち取るために新天地でのプレーを決断。加入から半年が経ち、新しい「ホーム」神戸で経験した変化、やりがい、そして代表への思いを聞いた。(取材構成・邨田直人)

 赤く躍動するチームの最前線で、ひときわ輝く背番号9。加入から半年が経過し、田中は冷静にチームを見つめた。

 「少しずつチームのベースができてきた。攻撃の組み立ては自分の課題ですが、最終的にはゴールシーンになったときになるべく関われるように意識しています」

 その言葉通り、7月18日の伊賀との開幕戦ではFW岩渕のスルーパスに抜け出して移籍後初ゴール。8月30日の愛媛戦ではショートカウンターからハットトリックを記録するなど、ここまで8試合で6得点を挙げている。裏へ飛び出してゴールへ流し込んだり、ドリブルで約50メートルを独走してネットを揺らしたりと、得点パターンの多彩さでその実力を示している。

 今年1月に日テレからINAC神戸へ移籍。12歳で日テレの下部組織に入団し、13年間過ごしたクラブを離れた。田中自身「今まではあまりしてこなかった」と話すほど、大きな決断だった。

 7年ぶりのリーグ制覇を掲げるINAC神戸も、エンゲルス新監督を迎えて変化の真っただ中。「監督もチームメートも全員違う。いろんなサッカー観や考え方をひとつに合わせるのは難しいと感じる」。主に下部組織から昇格した選手で構成される古巣との大きな違い。移籍したゆえに経験できる困難こそ、求めていたものだ。

 「これまではあうんの呼吸レベルでできた部分もあって、できないことをすり合わせる時間も少なかった。今はひとつのポジションを合わせる大変さと、その中で自分の特徴やチームを助ける動きを出さないといけないと感じている。そういう意味で、(日テレを)出てよかった」

 新天地でプレーの引き出しと対応力を磨き、強く意識するのは五輪代表の座。2016年から4年連続得点王とリーグで圧倒的な成績を残したものの、昨年のW杯代表メンバーからは落選。悲しみとさらなる成長への意欲は、移籍の原動力となった。

 「大きな大会で活躍したい気持ちは、W杯でメンバーから外れてより大きくなった。応援してくれる人たちもそれを期待してくれている。恩返しのひとつと感じています」

 目標に置いていた舞台は1年延期となった。その分、クラブで自らを磨く時間は増えた。西の港都・神戸で試行錯誤を続ける背番号9の視線の先に、日の丸を背負って戦う自身の姿がある。

【一問一答】

 --開幕戦(7月18日)ではPKを蹴ったが失敗

 「正直、開幕戦だとか移籍して最初の試合だとか、いつもと違う雰囲気で緊張しました。いつもGKを見て蹴っているのですが、冷静じゃなかったなと思います」

 --代表でもコンビを組むFW岩渕真奈との連携は

 「自分のプレーを見てくれているな、と感じる選手。特にいいボールをくれるし、ゴールに向かう一番いい動き出しをしなきゃと考えています」

 --岩渕とは自粛期間中も連絡を取っていた

 「いろんな話をしていても、サッカー観が近いことが多い。やりやすいなと思います」

 --国外でプレーしたい気持ちは

 「それはずっとありますし、行こうとしたときもあった。今回(INACへ)移籍を決めたのは、東京五輪に出たいというのが大きかったから。これから海外に行きたい気持ちはあります」

 --神戸の街の印象は

 「東京ほどガヤガヤしていないけど、三宮に行けばなんでもある。それ以外は落ち着いているし、住みやすいです。海も山も近いので、自粛期間は山に登ったり、海辺を走ったり。いいところだと思います」

 --関西弁は慣れた

 「聞き取れない人は、聞き取れないですね。チームメートは大丈夫ですが、お風呂で会ったおばちゃんとかに『〇×やんね!』みたいな…。“今なんて言った?”って、たまになります(笑)」

■田中 美南(たなか・みな) 1994(平成6)年4月28日生まれ、26歳。タイ出身。2007年に日テレの下部組織に加入。12年にトップチームへ昇格し、5度のリーグ優勝に貢献。20年からINAC神戸でプレー。16年~19年に4年連続リーグ得点王。リーグ通算で160試合に出場し104得点。日本代表通算42試合16得点。164センチ、56キロ。

  • 入団会見に臨むINAC神戸・田中美南(INAC神戸レオネッサ提供)
  • ハットトリックをあげた8月30日の愛媛戦、ボールを運ぶINAC神戸・田中美南(INAC神戸レオネッサ提供)
  • 入団会見に臨むINAC神戸・田中美南(中央)(INAC神戸レオネッサ提供)