2020.3.19 15:08

【サッカーコラム】「エア」の先へ向かったJリーグとクラブの試行錯誤

【サッカーコラム】

「エア」の先へ向かったJリーグとクラブの試行錯誤

特集:
No Ball, No Life
配信動画「いぶきで逢えたら」の撮影に臨む神戸・山口蛍(左)と酒井高徳(右)

配信動画「いぶきで逢えたら」の撮影に臨む神戸・山口蛍(左)と酒井高徳(右)【拡大】

 【No Ball、 No Life】試合がない。日常がない。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐべく、Jリーグは2度の延期を発表し、2月末の第1節を最後に試合は行われていない。早ければ4月3日の再開に向けて議論が交わされてはいるが、刻一刻と変化する状況の中で再延期も可能性にあがっている、という情報もあり、先を見通すことが難しい状況だ。

 2月26日に予定されていたルヴァン杯第2節の試合時間には、ツイッター上ではサポーターたちによる「#エアルヴァン杯」が“開催”された。試合予定時間の19時ごろからはサポーターたちが思い思いの試合展開を想像し、ときにその投稿どうしがつながりを持って、ひとつの試合が創造されていった。

 トレンドに入るまで膨らんだサッカー好きの熱狂は、Jリーグやクラブまで拡散。第2節の試合前後には、それぞれの公式アカウントが画像付きで「エアJリーグ」投稿をした。ただ、これにはプラスの反応以外に「もう『エア』はおなかいっぱい」という意見も一定数見られ、介入の「ちょうどいい」距離感を測る難しさも垣間見えた。

 長引く延期、練習の非公開、メディア露出の減少…難しい現状を少しでもよくしよう、明るくしようと、クラブはそれぞれの取り組みで「エア」の先へ向かった。

 例えば、FC東京はツイッターに「初めて選手からサインをもらってみた」という動画を投稿。これも「エア」ではあるが動画にコメント付き、しかもファン目線でクラブでしか発信できないもの。各選手の笑顔が印象的だった。神戸は「いぶきで逢えたら」という動画を配信。事前に募った質問に選手たちが答えるだけでなく、「宿題」としてリフティング動画を投稿。主に学校などが休校になった子どもとのやり取りを重視した。

 ここでは紹介しきれないほどさまざまな取り組みを各クラブが進めるなか、Jリーグも「#Jリーグキングチャレンジ」と題してリクエストを募集。選手、監督、マスコットなどストックされているあらゆる写真やゴールシーンなどの動画を、呼びかけに応じて公開している。時間の経過とともにあちこちで、公式でしか提供できないコンテンツを届けようという工夫が形になって現れてきた。

 試合がない。日常がない。蔓延(まんえん)するウイルスのなかで、サッカーは「不要不急」とみなされる。しかしサッカーは、生きるためには欠かせない喜びや悲しみ、欲望を満たす、代わりのないものでもある。試合はいつかまた始まる。それまでの少しの間、リーグとクラブは生活のささやかな欲望を満たすためにも、試行錯誤しながら発信を続けている。(邨田直人)