2019.11.1 14:36

五輪代表への執着も欧州移籍願望もなく 広島を支える森島司が戦い続ける理由

五輪代表への執着も欧州移籍願望もなく 広島を支える森島司が戦い続ける理由

五輪代表への執着も欧州移籍願望もなく 広島を支える森島司が戦い続ける理由

五輪代表への執着も欧州移籍願望もなく 広島を支える森島司が戦い続ける理由【拡大】

 いよいよ佳境に入る明治安田生命J1リーグ戦。現在4位のサンフレッチェ広島は2日の第30節で6位・川崎フロンターレと対戦する。広島は上位の結果次第だが優勝の可能性を残しており、ACL圏を狙えるチャンスもある。アウェイ等々力に乗り込む今節、カギを握るのが森島司だ。四日市中央工から加入4年目の22歳。今季ブレイクを果たすに至る背景に迫る。【取材・文=中野和也】

 ■城福監督への直訴

 やることはすべて、うまくいく。2019年の森島司は、そう思わせる勢いに満ちていた。Jリーグ初得点を奪った5月のアウェイ浦和戦では4得点すべてに絡む。ホームに約3万人が集った10月5日の神戸戦では2得点2アシスト、6点中5点に関係し、アンドレス・イニエスタやダビド・ビジャを脇役に追いやった。正確かつ変幻自在のキック、奪われてしまいそうで運べてしまうドリブル、局面をあっという間に景色を変えてしまうパス。攻撃ならばなんでもできるスキル。今や、森島司のいない広島は考えられない。

 2018年はケガを繰り返し、やることなすことうまくいかなかった。シーズン開幕の頃の期待値は低く、得意なシャドーの位置でプレーすることも許されなかった。右ワイドでのトレーニングを繰り返し、それでも試合に出られるのならばと気持ちを入れ替えたがACL第3節、ホームでの大邱戦前日、城福浩監督からメンバー外の通告をうける。

 いつかは、言いたいと思っていたことが、この瞬間、思わず口から出た。

 「だったら、シャドーでやらせてください」

 この「直訴」が森島の運命を変えた。その強い想いを受け止めた指揮官は、ACL第4節、アウェイの大邱戦から3試合連続アシスト。最終節のメルボルンビクトリー戦では強烈極まりないミドルシュートを決めきった。

 言ったからには、結果を出さないといけない。

 ゆとり世代の代表のように思われ、いつもはほんわかとした空気感を持つ若者だが、責任感は誰よりも強い。2017年末、広島退団が決まったミキッチに「14番を譲ってください」と求め、快諾を得て引き継いだにもかかわらず、結果が出せなかった2018年。「ミカに申し訳ない」とずっと思っていたという。

 10月29日の浦和戦、自分がマークすべき岩波拓也のオーバーラップを止められずに失点した時も、「俺のせいや」と膝をつき、しばらく動けなかった。チームを代表して試合に出ているのは、どういう意味を持つのか。それを身体に染み込ませているからこそ、彼は立てなかった。

 「逆にいえば、その想いがない選手は、ピッチに立つ資格はない」と城福監督は言う。

 「あの場面、モリシがたくさんの選手の気持ちを背負って戦っていることが確認できた。選手全員が確認しないといけないことです」

 ■プロ意識のいしずえ

 来年の東京五輪、森島司は代表選出の対象となる。先日のU-22日本代彦のブラジル遠征に参加し、試合終盤に起用される予定になっていたが、退場者が出たことでピッチに立つことはなかった。

 「でも、いい試合だったし、自分が試合に出たかったとか、そういう感覚はまったくない」

 強がりでもなんでもなく、これが本音だ。彼は五輪代表に執着心はなく、もっといえば今の若者が普通に抱える欧州移籍への願望もない。

 では、なんのために、彼は戦うのか。

 一つは、サッカーが好きなこと。やっていて、楽しいということ。

 そしてもう一つは。

 「応援してくれる人が僕にはいる。そういう人たちがいつも、頑張ってとか、五輪に出てとか、そういう言葉をかけてくれる。そういう人がいるから頑張れるし、その人たちのためであれば、五輪に出たい」

 淡々と語る彼は、プロフェッショナルのベースをしっかりと持っている。自分のために戦うのは、アマチュアでもできること。プロはサポーターのために、応援してくれる人のために、全てを投げ打つ。森島司は、それができる精神性をもっているという意味で、プロにふさわしい。

 川崎フロンターレには、ブラジル相手に2得点を奪った田中碧がいる。彼はボランチ、森島はシャドー。マッチアップする可能性があるが、森島は意識していない。

 「遠征に行った時、仲良くなった?」

 そう語りかけると、笑いながら若者は首を振った。

 「全然、喋っていないんです。僕も彼も人見知りなんで」

 自分のことを表現するのは得意ではない。それでも、主張するべきは主張する。そして、責任をとる。新しい日本の若者像を、森島司は表現している。(Goal.com)