2019.9.3 12:27

【サッカーコラム】フェルナンドトーレス、最後のストライカー姿を見届けて

【サッカーコラム】

フェルナンドトーレス、最後のストライカー姿を見届けて

特集:
No Ball, No Life
鳥栖・フェルナンドトーレス

鳥栖・フェルナンドトーレス【拡大】

 【No Ball、No Life】J1鳥栖のFWフェルナンドトーレス(35)が、8月23日のJ1第24節の神戸戦で現役生活に終止符を打った。

 引退セレモニーではリバプール時代の盟友スティーブン・ジェラード(39)からビデオメッセージが届き、最後はチームメートに迎えられて背番号と同じ9度、宙を舞った。

 セレモニーを見るため記者席の外に出ると、すぐ右隣に現れたのは会見を終えたフィンク監督。トーレスがいるピッチの中央と、現役生活を振り返る映像から片時も視線を外さず、目に焼き付けていた。その少し奥にはイニエスタ、ビジャの姿もあった。イニエスタはトーレスが入場したときからずっと、これまでピッチのどこで見せた表情とも違う顔をしているように見えた。涙を抑えきれず、最後の時間をかみしめていた。

 数々のゴールでスタジアムを熱狂させてきたトーレスだが、子供心に印象的だったのは2008年の欧州選手権(EURO)決勝、ドイツ戦で決めた得点だ。MFシャビのスルーパスに反応すると、併走するDFラームを外から回り込んでぶっちぎり、距離を詰めるGKレーマンより一瞬早く右足を添えてボールをゴールネットまで弾ませる。ヒーローのようにチームを救うストライカー姿は、サッカーが好きな中学生だった私の目にもまぶしく映った。

 引退会見では遅い時間にもかかわらず、全ての質問に丁寧に答えたトーレス。鳥栖というクラブや日本のこと、友情や家族のこと…。そんな中で11年前、スペイン代表を栄光に導いたストライカーにはやはり、「FWフェルナンドトーレス」のことを聞きたかった。

 --ストライカーとして、FWとして数多くのゴールを決めてこられましたが、ひとつのゴールから次に向かう野心や向上心を、どうやって維持してこられましたか。

 「ひとりの人間がFWとしてプレーすることを選んだなら、ゴールを決めて、決め続けなければいけないんです。いいプレーをしてもゴールがなければ監督にも使ってもらえなくなります。だから若いFWの選手に助言するなら、『とにかくゴールを決めなさい』と言いたい。『うまいプレーをする必要はない。ゴールを決めろ』と。それだけでいいんです」

 最後の試合では1-6の後半ロスタイム、FW金崎が放ったシュートのこぼれ球がペナルティーエリア内、トーレスのもとに渡った。難しい体勢から力強く左足を振り抜いたが、ボールは枠のはるか左。これが現役最後のシュートとなった。FWを選んだ以上、ゴールを決め続けなければいけない-。揺るぎない信念を持ったストライカーにふさわしい、潔く華やかなラストマッチだった。(サッカー担当・邨田直人)