2019.7.17 13:45

【サッカーコラム】VARはレフェリング改革の導入、誤審を懐かしく思う時代が来る

【サッカーコラム】

VARはレフェリング改革の導入、誤審を懐かしく思う時代が来る

特集:
No Ball, No Life
横浜M対浦和戦の後半、審判に抗議する浦和・大槻監督(中央)=日産スタジアム

横浜M対浦和戦の後半、審判に抗議する浦和・大槻監督(中央)=日産スタジアム【拡大】

 【No Ball、No Life】このコラムはおよそ月に1度、担当がまわってくる。その都度内容を考えるのだが、過去を振り返ると3回に1回はVARやレフェリーについて書いている気がする。今回もまた、レフェリーについて触れる。

 詳細するまでもなく、13日のJ1第19節、横浜M-浦和でかつて目にしたことがないドタバタがあった。ゴール認定→取り消し→認定と判定が覆っていく様は、非常に興味深かった。同節は松本-磐田、鳥栖-広島でもオフサイドに関して「?」という判定があった。詰まるところ、細部を見ていけばどの試合にも判定ミスはある。選手がトラップやパスをミスするように-。

 「選手のレベルアップにレフェリーがついていけていない」

 「これだけスピード感が増したなか、現在の人数でピッチ全域をカバーするのは不可能になっている」

 どちらも現実を表しており、その通りだといえる。一方で、レフェリーは常に向上心を持ってレフェリング能力のアップに努めていて、意識改革が進んでいるのも事実だ。それでも、冷静さを失ってアディショナルタイムを間違えるという大胆なミスを犯すことがあるし、視認できなかったゆえの誤審が後を絶たない。レフェリーの不手際はJリーグに限ったことではなく、コパ・アメリカや女子W杯でもあった。いまのサッカーを正確に裁くのはもはやVARでも不可能で、人為の及ぶところではないのかもしれない。

 過去、アシスタントレフェリーを取材したときにこんな話を聞いたことがある。1990年代のJリーグでのこと。タッチライン際で接触プレーがあったときに、レフェリーは笛を吹いたものの自身の判断でイエローカードは出さなかった。それをみて、アシスタントレフェリーは「なんでイエローを出さないんだ!」と声をかけたという。このアシスタントレフェリーにとって、レフェリーは後輩だったという。先輩からの指摘を受けたレフェリーは、結局イエローカードを出すこととなった。

 一連のやり取りをベンチ前にいた監督に逐一聞かれ、「なんでお前がレフェリーの判断に口を出すんだ!」と抗議されたそうだ。当のアシスタントレフェリーもさすがにこれはやってはいけないと後日になって猛省し、以降は勝手な判断を押しつけることなく、レフェリーや選手とコミュニケーションを取るようになったそうだ。

 先輩、後輩の関係でイエローカードを出す、出さないが決まってしまう。いまとなっては非常に人間臭い出来事で、そういう時代もあったのである。無論、プロフェッショナルレフェリーが誕生し、個々の意識が高くなっている現在は、こうしたジャッジが下されることはない(はずである)。

 Jリーグではまだ実施されていないVARだが、おそらく改革の導入に過ぎず、ここ数年でレフェリングに大きなうねりがもたらされるに違いない。AI(人工知能)が進化するスピードは早く、想像以上に多くの現場ですでに運用されている。冷静さを失った。視認できなかった。そんな誤審があった時代を、懐かしく思う日が来るのかもしれない。(フリーランスライター・飯塚健司)