2019.6.11 11:49

【サッカーコラム】W杯は初戦が重要説をなでしこジャパンに覆してほしい

【サッカーコラム】

W杯は初戦が重要説をなでしこジャパンに覆してほしい

特集:
No Ball, No Life
アルゼンチンと引き分け、選手と握手を交わす高倉監督(左端)=パリ(共同)

アルゼンチンと引き分け、選手と握手を交わす高倉監督(左端)=パリ(共同)【拡大】

 【No Ball、No Life】2019フランス女子W杯が開幕し、なでしこジャパンがパルク・デ・プランス(パリ)でグループリーグ初戦のアルゼンチン戦を行い、0-0で引き分けた。フランスで開催されるW杯で、アルゼンチンとの初戦--。思い出されたのは1998年フランスW杯の光景で、日本サッカーがはじめてW杯の舞台に立った一戦が鮮明によみがえってきた。

 1998年6月14日、会場はトゥールーズ。くっきりと澄み渡った青空に、スタンドは日本のブルーとアルゼンチンのスカイブルーに埋めつくされていた。緊張で胸が高鳴っていたのは誰もが同じで、後々に聞いた話ではピッチへの入場を持つアルゼンチンの選手たちも表情が硬かったという。対戦した元日本代表の名良橋晃氏は、「バティ(バティストゥータ)とかシメオネでも緊張するんだなと思った」と語っている。

 さらに付け加えれば、2010年南アフリカW杯を控えて、やはりこのときのアルゼンチン戦に出場していた山口素弘氏を司会に、長友佑都、岡崎慎司などを交えて座談会を行ったことがあった。長友が経験者である山口氏に投げかけた質問は、「W杯に向けてどんな準備をすればいいですか?」というものだった。答えは簡潔で、「いつもの力を発揮できる準備をしておくこと」というものだった。

 完全にいまさらだが、W杯に限らず大きな大会で初戦が大事だとされるのは、入り方が難しいからだ。十分に準備ができていたはずでも、うまくいかないケースがある。トゥールーズでは初出場の日本代表に対して、勝ち上がりを考えて力をセーブしていたのかもしれないが、アルゼンチンの動きに明らかにブレーキがかかっていた。その後のW杯では、ここでは詳細しないが日本代表が初戦の入り方に失敗したケースもあった。

 パルク・デ・プランスでのなでしこジャパンは、決して力をセーブしていたわけではない。若く、W杯初出場の選手が多いチームは、リズムを作り出すはずのパスワークでミスを犯していた。サポートが遅く、アルゼンチンの素早い身体の寄せに飲み込まれ、普段はあまりないトラップでのミスも目についた。

「ボールを持たされていた」「相手のペースに飲み込まれた」「サイドからのクロスという選択がなかった」。試合後のなでしこジャパンの選手たちは、力を発揮できなかったことを隠そうとしなかった。

 幸い、負けてはいない。最低限の勝ち点1は確保している。ただ、早くも難しい状況になってしまったのも事実。男子のW杯で考えれば、初戦に引き分けて決勝トーナメントに進出したのは自国開催だった2002年W杯のみだ。なでしこジャパンをみても、決勝に進出した2011ドイツ女子W杯、2015カナダ女子W杯ではいずれも初戦に勝利している。

 初戦が重要なのは間違いないが、だからといってすべてが決まってしまったわけではない。2010南アフリカW杯を制したスペインは、初戦黒星というスタートだった。高倉麻子監督には2014U-17女子W杯優勝、2016U-20女子W杯3位という確かな実績がある。ここからどう勝ち点を積み上げてグループリーグを突破し、決勝トーナメントを勝ち上がっていくか。逆境からはい上がるなでしこジャパンを見たいと思っている。(フリーランスライター・飯塚健司)

  • 後半、シュートが外れ、頭を抱える長谷川=パリ(共同)