2019.2.14 19:54

ソン・フンミンはいかにしてトットナムの主役に上り詰めたのか

ソン・フンミンはいかにしてトットナムの主役に上り詰めたのか

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ソン・フンミンはいかにしてトットナムの主役に上り詰めたのか【拡大】

 2月10日に行われたプレミアリーグ第26節トットナム対レスター戦の試合前、トットナムの仮のホーム、聖地ウェンブリー・スタジアムに向かう道で露天商に出くわした。

 彼らが両手いっぱいに抱えているのは、FWソン・フンミンの名とイラストをあしらったマフラーだ。売上はとても良いらしく、多くの売人が威勢のいい掛け声でこのマフラーを売り込んでいた。韓国代表FWのマフラーを大量に売る姿は、これまで見たこがない。

 現在トットナムでは、得点源のFWハリー・ケインと中盤のデレ・アリが負傷離脱中。攻撃の中心を担うイングランド代表の両輪を欠くという厳しい状況の中、彼らの穴を埋める活躍を見せているのが、このソン・フンミンだ。プレミアリーグ13節以降、出場した公式戦16試合で13ゴール7アシストと驚異的なペースで結果を残している。ケインとアリの離脱後も、トットナムが失速することなく3位の座をキープしているのは、3試合連続ゴールを挙げているこの26歳FWの存在なくしてありえなかった。

 だからこそ、トットナムサポーターは、彼に期待と羨望の眼差しを向ける。笑顔のソンが描かれたマフラーと、それを買い求めるサポーターを目の当たりにし、韓国代表アタッカーがトットナムでトップクラスの人気を誇る選手になったと、そう強く感じた。

 ■アジア人離れした最大の武器

 13日に行われたドルトムントとのチャンピオンズリーグ決勝トーナメント第1戦でも、ソンの存在感は際立っていた。3-4-1-2の2トップ一角に入ると、前半から攻撃陣を牽引。味方のスルーパスに反応して相手DFラインの背後に飛び出し、シザーズフェイントからシュートを放ったりと、常にドルトムントの脅威になり続けた。

 ソンのストロングポイントは、アジア人離れしている「強さ」と「速さ」にある。マーカーに体をガツンと寄せられても、体幹と足腰の強さを生かして簡単に倒れることはない。それでいて、攻撃時には加速力抜群のランニングでフリースペースに侵入。高い俊敏性とボールテクニックを駆使し、スピードに乗ったドリブルから相手ゴールを強襲する。体の大きい欧州の選手に比べると、東アジアの選手はフィジカル面でハンデを抱えるが、彼のプレーはこのようなアジア人のウィークポイントをまるで感じさせない。

 さらに、特筆すべきは緩急の付け方だ。

 マーカーに寄せられても、「抜きにかかるぞ」と言わんばかりに一旦スピードを緩める。敵が減速したところで、ふたたびアクセル全開で加速。相手のマークを振り切ってフィニッシュまで持ち込むのだ。守備陣のマークも厳しいプレミアリーグのなかで、同様の崩しができるアジア人プレーヤーは彼しかいないだろう。

 ドルトムント戦で挙げた1点目には、そんなソンの巧さが凝縮されていた。ボールがサイドに流れると、バックステップでマーカーから離れる。そして、瞬時に体を反転し、ゴール前のスペースに侵入。最後は、クロスボールに右足を合わせネットに沈めた。本人は「クロスボールが素晴らしかった。何もする必要がなく、ボールに触りさえすればよかった」とラストパスを供給したベルギー代表DFヤン・フェルトゲンのクロスを称賛していたが、鋭いゴール嗅覚と高い決定力を誇る彼らしいゴールだった。

 これで、公式戦4試合連続ゴール。今季の通算得点数は、ケインに次ぐチーム2位の16点となった。90分の交代時には、トットナムサポーターがスタンディング・オベーションで讃えた。

 ■世界が認めるアタッカーへ

 ピッチ外でも称賛の言葉は広がっている。レスターFW岡崎慎司は「今シーズンだけでなく、昨シーズンもすごかった。普通に考えても、アジアのナンバーワン・プレーヤーであることは間違いない」と、同じアジア人としてソンを褒め称える。元トットナム所属で現在は解説者のジャーメイン・ジェナスも「右足でも左足でも、まったくプレースピードが落ちない。もし彼が欠場することになれば、ケインの不在と同じくらい大きな打撃になる」と、チームにとって不可欠な存在だと断言する。

 しかし、本人に浮かれるところはまったくない。取材エリアでは「アニョハセヨ(こんにちは)」とお辞儀してから、毎試合駆けつける韓国人記者団の質疑応答に応じている。彼らに対し、ドルトムント戦後も「気を引き締めて邁進したい」と謙虚な姿を見せていたようだ。

 ソンの得点で試合の流れを引き寄せたトットナムは、さらに2点を追加して3-0で勝利。ケインとアリの欠場で苦戦が予想されていたが、ベスト8進出に大きく前進した。

 トットナムが最後にCLラウンド16を突破したのは、2010-11シーズン。現RマドリードのMFルカ・モドリッチやFWギャレス・ベイルらを擁し、ACミランを下した8年前に遡る。

 以降数年間は欧州最高峰の舞台から見放される時期が続いたが、2014年のマウリシオ・ポチェッティーノ監督就任でチームは大きな飛躍を遂げた。昨季は王者Rマドリード相手に1勝1分けと勝ち越してグループ首位通過を果たすなど、世界でもその実力を認められる存在となった。それでも、決勝トーナメント1回戦ではユベントス相手に敗退。ラウンド16の壁に阻まれ続けてきたのだ。メガクラブの仲間入りを果たしたい彼らにとって、CL決勝トーナメントで勝ち上がっていくのは悲願だった。

 そんなトットナムが、再び世界にその実力を示したウェンブリーの夜。その中心には、間違いなく背番号7の姿があった。

 取材・文=田嶋コウスケ(Goal.com)

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