2016.4.12 11:15

【サッカーコラム】159点目を決めた川崎・大久保…わずか13秒の劇的ゴールの裏側

【サッカーコラム】

159点目を決めた川崎・大久保…わずか13秒の劇的ゴールの裏側

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No Ball, No Life
鳥栖戦の後半ロスタイムにゴールを決めた川崎・大久保嘉人

鳥栖戦の後半ロスタイムにゴールを決めた川崎・大久保嘉人【拡大】

【No Ball、No Life】

 予想もしなかった劇的な幕切れにも、シナリオは用意されていた。川崎のFW大久保嘉人が10日の鳥栖戦(ホーム)で、J1通算単独最多の159点目を記録。0-0のまま後半ロスタイムも表示の3分が過ぎたとき、最後のワンプレーでFW小林悠の左クロスを頭で押し込んだ。

 「全員あきらめていなかった」。風間八宏監督がラストの攻防を振り返った。まずは、韓国代表GK鄭成龍が相手陣内深くにロングボールをけり込んだ。「長いキックでしたが、あれは彼の武器です。みんなが知っている。ただ、いつもは見せる必要がないだけ」。川崎はショートパスをつなぐスタイルだが、切羽詰まった場面での「飛び道具」をひそかに用意していたという。

 ロングボールは相手DFに頭ではね返されたものの、こぼれ球を拾ってMF田坂から小林へとつないだ。ボールがタッチラインを割れば、試合終了のホイッスルが鳴っていただろう。「触ることで精一杯」と田坂はいえば、小林も「ギリギリだった」と相手よりも先にボールに触れてプレーを途切れさせない。

 小林はターンをして前を向くと、体勢を崩しながら左足でクロスを入れる。「本当に時間がなくて嘉人さん(大久保)なら、ここにいるだろうと思って迷わずに足を振り切った」。中を見ずに放り込んだクロスは、遠いサイドで待ち構えていた大久保の頭にドンピシャで合った。

 「練習からシュート性の速いクロスを嘉人さんに要求されていた」と小林は説明する。クロスに対し、大久保が遠いサイドで待つ傾向が多いのも分かっていただろう。キックの方向、力の入れ具合などを瞬時にイメージしていた。

 鄭成龍からボールを蹴り出してから、13秒での劇的ゴール。大久保だけが「なんであそこにいたのか、自分でもよく分からん」と首をひねっていたが、周囲はその類い希なゴール嗅覚を生かそうと、周到なお膳立てをしていた。(浅井武)