疑問だったJ1鹿島・柴崎のスペイン移籍…売り込むならドイツなどの方がよかった

サッカーコラム
鹿島・柴崎

 【No Ball,No Life】

 31日未明、J1鹿島のMF柴崎岳(24)のスペイン1部リーグ、ラスパルマスへの移籍が破談になった、と現地で報じられた。かねてより海外志向のあった柴崎は28日に鹿島の関係者にも、何も告げないまま日本を出発。「移籍が成立した際にすぐにサインできるように」と代理人の指示に従い、首都マドリードに滞在することとなったが…。

 「交渉に進展はないようだ」(鹿島・鈴木満強化部長)。その後は地元紙でもほとんど情報が伝えられず、交渉は暗礁に乗り上げており、ここにきて「破談」の報道が出てきた。

 そもそも、このスペイン移籍には疑問があった。昨年12月のクラブW杯決勝で同国の強豪レアル・マドリード(欧州代表)相手に2得点を挙げる活躍を見せ、「SHIBASAKI」の名は世界にとどろいた。しかし、大会後は欧州クラブからの公式オファーだけでなく、身分照会も鹿島には届いていない。

 代理人はクライアントに売り込む形で交渉の席についたが、興味を示したラスパルマスも補強候補選手はほかにも数人おり、柴崎の優先順位は低かった。

 柴崎の技術が高いのは誰もが認めるところだが、売り込み先を誤った感は否めない。ボディーコンタクトの激しいドイツ・ブンデスリーガなどでは大柄な選手に対し、スキルで対抗できる日本選手は重宝されている。これに対してスペインリーグでは、柴崎タイプの選手が数多く活躍。EU圏外枠(外国人枠)を必要とする助っ人は、突出したレベルにない限りは獲得するメリットがないと考えられている。

 柴崎はA代表での実績が乏しく、海外での経験もない。即戦力にはならない、と評価された可能性が高い。

 仮にスペイン移籍が決まっていても、同地の水は柴崎の性格は合わないだろう。かつて同国1部のマラガのテクニカル・ディレクター(TD)を務めた元スペイン代表主将DFフェルナンド・イエロ氏は「日本人は技術、戦術理解度があるが、おとなし過ぎる」と話したことがあった。

 この言葉のとおり、スペイン人の選手は我が強い。柴崎もピッチ上で仲間とつかみ合いのケンカをするほど内に秘めたものを持つが、同国の選手はそれ以上。納得のいかないプレーがあると罵(ののし)り合いをするのは日常茶飯事で、仲間であっても練習中に削り合うこともある。

 私生活でも日本と大きく違う。ドイツや英国などは「個」を尊重してくれるが、スペイン、とりわけ南部ではプライバシーを確保するのは難しい。街ではアジア人に対しては平気で「チニート」(中国野郎※華僑が多いため)と罵倒してくるものも多く、教育水準はお世辞にも高いとはいえない。

 サッカー選手であろうと、街中で悪意のある言葉を浴びせられることも頻繁にある。こちらが日本人だと分かると、手のひらを返して、人なつっこくなることも多いが、そこからのスキンシップは激しく、パーソナルな空間にまで首を突っ込んでくることも多々ある。

 このオープンな性格は日本人には異質に感じられるかもしれない。柴崎は日本選手の中でもさらにおとなしいタイプ。サッカーをするだけではなく、そこで生活をすることを考えると、スペインではなく、ドイツなどのリーグの方がよかったのではないか、と思う。

 移籍市場終了までわずか。柴崎にとって最良の結果になることを望む。(一色伸裕)

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