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【サンスポ×日体大】綱登りで磨いた肉体、藤原流“金”トレ

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綱登りをする藤原。強靱な肉体を作る原点だ(撮影・塩浦孝明)  2020年東京五輪開幕まで、9日で350日。出身大学別で最多62人の夏季五輪メダリストを輩出している日体大とコラボレーションした長期連載の第18回は、柔道の世界選手権(25日-9月1日、日本武道館)男子81キロ級代表、藤原崇太郎(21)=スポーツ文化学部武道教育学科3年=を特集する。ボディービルダーに憧れる柔道家が目指す“金メダルボディー”とは-。 (取材構成・石井文敏)

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 鍛え抜かれた肉体を武器に、次々と相手を畳に沈める。日体大の東京・世田谷キャンパスの柔道場。藤原は午後5時半に始まった稽古で、なりふり構わず汗を流した。

 「去年と比較すると、精神的、体力的、技術面においても一回りも二回りも成長している。そこは自信を持っている」

 肩で息をするほど追い込んだ約2時間の稽古後、藤原は山本洋祐部長(59)と居残りで日課の打ち込みを行う。技の切れ味を鋭くし、攻撃の幅を広げるため、体落としなどの習得に励む。66キロ級世界王者の阿部一二三(ひふみ、4年)も指導する山本部長が「藤原は稽古、フィジカルトレーニング、朝トレもしっかりやる」と評価するほどの練習量を誇る。

 2016年リオデジャネイロ五輪で銅メダルを獲得後、けがに泣いた永瀬貴規(25)=旭化成=にかわって、藤原が彗星(すいせい)のごとく現れた。最大の武器は鋼の肉体から繰り出す技だ。「和製ドリアン・イエーツになりたい」と、世界的に有名な英国出身のプロボディービルダーを崇拝するほどの筋肉好き。畳を離れた時間も、筋量を上げるために己と向き合う。

 授業の空き時間などを利用して週5回、トレーニングセンターに通う。特徴は、ボディービルダーのように日ごとに鍛える部位を変えること。背中と脚を週2回ずつ、週1回はパワー系のメニューを行う。約1時間半、柔道につながるように体の回旋を意識しながら、同じ部位を刺激し続ける。銀メダルだった昨秋の世界選手権から体重の増減はないが、体脂肪率は14・5%から12・5%と減った。除脂肪を実現して単純計算で筋量が約1・7キロ増加した。

 「全てにおいて『柔道に必要かどうか』を意識して生活している」

 自分で考えて練習メニューを作成する。中でも大事にするトレーニングが綱登り。藤原は04年のアテネ五輪をテレビで観戦し、3連覇を達成した60キロ級の野村忠宏に憧れ、柔道を始めた。その後、稽古を重ねるうちに、野村が綱登りで強くなったことを知り、祖父にお願いして兵庫・西脇市の自宅にある車庫に綱をつるしてもらった。

 無我夢中に登った日々が基礎になり、今では背中が自慢の部位になった。大学入学後も、柔道場につるしてある高さ約8メートルの綱を使って鍛錬を継続。背中の筋肉でフェルトペンを挟めるほどに鍛え上げた。「相手を引き寄せたり、密着戦でひねったりするときにいかせる」。得意技の裏投げで屈強な海外勢を制圧。日本男子81キロ級を引っ張る逸材へと成長した。

 世界選手権(日本武道館)は25日に開幕。81キロ級で世界ランキング7位の藤原は大会4日目の28日に登場する。ライバルは世界王者のサイード・モラエイ(27)=イラン。過去1勝2敗の怪力を倒しての金メダルが、東京五輪代表への最大のアピールになる。

 「去年、決勝で負けた借りを返すために、稽古をしてきた。自分の夢である五輪に一歩でも近づけるように強くなる」

 81キロ級は技とともに、世界の猛者に対抗する力が求められる。進化する“金メダルボディー”を武器に、21歳の藤原がその名をとどろかせる。

★藤原 崇太郎(ふじわら・そうたろう)という男

 ◆生まれ 1998(平成10)年4月27日生まれ、21歳。兵庫・西脇市出身。

 ◆競技歴 6歳のときに競技を始める。兵庫・小野中から日体大荏原高を経て日体大に在学中。15年世界ジュニア銀メダル、16年ロシアジュニア優勝。

 ◆シニア大会 17年アジア選手権優勝、18年GS(グランドスラム)パリ優勝、GSエカテリンブルク(ロシア)優勝。昨年の世界選手権では銀メダルを獲得。今年2月のGSデュッセルドルフ(ドイツ)優勝、同5月のGP(グランプリ)フフホト2位。

 ◆得意技 裏投げ。左組み。

 ◆抜群の対応力

 日本代表の井上康生男子監督(41)は藤原について「自力に加えて対応力がある。相手に応じて柔道を変化させる力がある」と評価する。

 ◆マイブーム 「いろんな髪形に挑戦すること」。

 ◆東京五輪が行われる日本武道館の思い出 「高2で出た全国高校選手権で団体戦日本一になったこと」。個人戦で2連覇を成し遂げた。高3では主将を務めて、チームを引っ張った。

 ◆性格 自己分析は「面倒くさがり屋」。

 ◆ライバル 16年リオデジャネイロ五輪男子81キロ級銅メダリストの永瀬貴規(25)=旭化成。昨夏に実戦復帰した国内の好敵手に今年4月の全日本選抜体重別選手権決勝で敗れた。憧れの選手に対して「うかうかしていられない」。

 ◆好物 みかんなどフルーツ全般。「目の前にお皿に盛られて出てきたら、なくなるまで食べる。あとは焼き肉」。

 ◆座右の銘 「つまずく石を踏み台に」。小野中3年時に、国語の教師から教わった。「つまずいた石を踏み台にしたら、もうつまずかない。1回は失敗してもいいけど、2回目は失敗するなという意味」。

 ◆名前の由来 宗太郎越え(そうたろうごえ)が由来。大分・佐伯市と宮崎・延岡市の県境にある宗太郎峠。古くから交通の難所として知られ、この峠を越えるルートは宗太郎越えとして知られる。「雨のときも風の時も、たくましく越えるように」。

 ◆サイズ 175センチ。

★トレーナー・寺田氏 継続こそ力なり

 藤原のフィジカルトレーニングを指導し、「グリル寺田」の愛称でボディービルダーとしても活躍する寺田健太郎氏(26)=日体大トレーニングセンター=が、藤原の魅力と素顔を明かした。ボディービルダーに匹敵する筋肉愛と探求心を称賛した。

 藤原は真面目でストイック。例えば、負荷がかかる代表合宿後の翌日、休養する選手が多い中、藤原の場合は疲労を考慮しながら体を動かす。トレーニングを休まず、継続するから年々、成長している。

 日本代表のスタッフとも連携を図りながら、トレーニングに取り組む中で、背中の筋肉と同様に力を入れているのは脚。昨年10月の学生大会で左肘を負傷し、しばらく畳で稽古を積めなかったから。同9月の世界選手権で海外勢との地力の差を肌で感じたこともあり、タイヤ引きやダンベルを使ったメニューで強化を進める。

 疑問があれば、すぐに聞いてくる探求心には目を見張る。藤原は大会約4週間前から減量に入る。私のようなボディービルダーの食生活を研究し、エンバク(燕麦)を脱穀して調理しやすく加工したオートミールに、サバ缶やツナ缶に卵を入れて作る減量食を確立しているのも、成長し続ける理由の一つだろう。 (談)

★柔道・東京五輪への道

 日本は開催国枠で男女各7階級に1人ずつ出場する。第1段階は今月25日開幕の世界選手権優勝者が11月のグランドスラム(GS)大阪大会を制し、強化委員会で出席者の3分の2以上の賛成を得れば代表入りが決定する。次は来年2月のGSデュッセルドルフ大会(ドイツ)終了時点で1、2番手の差が圧倒的に開いていると強化委の3分の2以上が判断すれば決まり、4月の全日本選抜体重別選手権が最終選考会となる。

日体大柔道部

 1901(明治34)年創部。男子は昨年10月の全日本学生体重別団体優勝大会で初優勝、今年6月の全日本学生優勝大会では3位と大健闘するなど近年、力をつけている。五輪金メダリスト、古賀稔彦氏の次男で、2018年世界ジュニア60キロ級王者の古賀玄暉(3年)ら有望選手が多数在籍する。山本洋祐部長、田辺勝男子監督、小嶋新太女子監督。部員は男子120人、女子24人。

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