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【サンスポ×日体大】37歳の挑戦!ハンドボール男子・宮崎の執念

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鍛え抜かれた肉体をいかして、力強いシュートを放つ37歳の宮崎。躍動感あふれるフォームだ  2020年東京五輪開幕まで、5月1日で450日。出身大学別最多62人の夏季五輪メダリストを輩出している日体大とコラボレーションした長期連載の第15回は、4月から日体大に再入学したハンドボール男子の宮崎大輔(37)=体育学部3年=を特集する。平成を代表する“ハンドボール界のレジェンド”は新元号「令和」を学生で迎えた。東京五輪のコートに立つために異例の再入学を決断し、母校で原点回帰する。 (取材構成・石井文敏、鈴木智紘)

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 元気はつらつな学生とともに37歳、宮崎の姿があった。コート内を縦横無尽に走る。横浜・健志台キャンパス第1体育館。日体大再入学への思いを激白した。

 「ハンドボール人生、最後の挑戦。悔いが残らないように、基礎からたたき直す。(このままだと)自然に引退になっちゃう。最後までやり切りたい」

 約2年の大学生活が過ぎた2001年に日体大を休学し、海外でのプレー機会を求めてスペインに留学した。日本代表を長らく牽引(けんいん)してきた実力者も近年、日本リーグ・大崎電気で出場機会が限られるようになり、今年3月にプロ契約を打ち切った。新元号・令和を学生で迎えた。見据えるのは、既に開催国枠で出場権を持つ来夏の東京五輪だ。

 「若い選手に負けない体力をつける。(自身のポジションである)サイドが一番走るので。日体大で練習を始めて(効率の良い)走り方などを再確認できている。スピード、体力、技術を求めていきたい」

 代表生き残りへ、堅守速攻が自慢の母校で基礎から学び直し、走破できる体力を取り戻す。収入はゼロで貯金を切り崩しながらの学生生活だが、「(大崎電気に比べて)練習は時間も量も2倍以上」と充実の表情を浮かべる。チーム練習は平日午後4時15分から午後7時などで週6回。年の差がダブルスコアの1年生と同じ練習をこなす。

 また「自分のため、競技ではどう生かせるかと考えながら聞いていると面白い」と3年生として授業にも出席。スポーツ心理学など座学にも取り組む文武両道の日々だ。コミュニケーション論では「納得するコミュニケーションをとらないと意味がない」と相手の立場や考え方を踏まえる重要性を再確認した。

 これまで、さまざまな競技のアスリートが跳び箱の高さなどを争うテレビ番組「スポーツマンNO・1決定戦」に出演。“ミスター・ハンドボール”として、競技の認知度アップに貢献してきた宮崎にとって東京五輪出場は悲願だ。04年のアテネ五輪予選から16年のリオデジャネイロ五輪予選まで4大会連続で挑戦するも、全て敗戦。自身初の五輪出場に向けて日体大再入学という異例の決断を下した。

 「代表に選ばれるために何が必要かを考えなければいけない。夢ではなく目標。かなえたいではなく、成し遂げたい。令和では平成以上にハンドボールがメジャーになるように頑張りたい」

 かつて中心選手だった日本代表では現在、レギュラーを争う立場に変わった。五輪代表は14人と狭き門で、39歳で憧れの舞台を迎える。平成を駆け抜けた宮崎は、令和でも輝く。

★関東学生ハンドボール連盟の規定

 日体大に再入学した37歳の宮崎は、すでに関東学生春季リーグ戦に出場して活躍。連盟の規定では年齢や年次を問わず、「大学生」として出場登録が完了すれば、試合に出場することができる。

★日体大・松井監督も後押し「ここが五輪への近道」

 師も同じ望みを持つ。宮崎が前回在籍時から部を率いる1984年ロサンゼルス五輪代表の松井幸嗣監督(61)=日体大副学長=は、教え子を東京五輪に送り出すつもりだ。

 「ここでのプレーが五輪への近道になる」

 宮崎は日本代表で長らく司令塔のセンターに君臨したが、若手の台頭もあって2年ほど前に左サイドにコンバートされた。攻撃を組み立てて得点も奪った役割は変わり、サイドラインの上下動を繰り返す。攻守が切り替わった瞬間、ギアを上げられるか。この動きが、とりわけサイドプレーヤーの生命線となる。

 “走るハンドール”が日体大の伝統で、速攻を軸とする。だからこそ、運動量が求められる代表の生き残りにつながると再出発の地とした。努力の汗が染みこんだコートを駆ける37歳を見つめ、指揮官は言う。「うちは『3歩ダッシュ』を大事にする。大輔は昔からトップスピードに乗るまでが速かった」。出足の3歩は、学生と比べても遜色ないとみている。

 スピード一辺倒の上下動だけではない動きも磨けるかが、この先の課題だ。「どのコースを選んで走るか。緩急も大事。『走りの宮崎』になれる可能性はある」と松井監督。呼応するように、走りが主体のメニューを終えたまな弟子は口にした。「走りの強弱とか忘れていた。これができればスムーズに点が取れる」。年輪を刻んだ額に充実の汗が光っていた。

★東京五輪のハンドボール

 開会式翌日の7月25日から最終日の8月9日まで16日間、東京・渋谷区の国立代々木競技場で行われる。男女ともに各12チームで争う東京五輪に向けて、男女日本代表は6月19日に韓国との定期戦に臨む。男子は同20、22日にスウェーデンと強化試合(会場はすべてアリーナ立川立飛)を行う。

★ハンドボール男子・世界の情勢

 欧州で人気が高く、日本とは異なり、プロリーグが複数存在する。2016年リオデジャネイロ五輪では、デンマークが金、フランスが銀、ドイツが銅で、欧州勢がメダルを独占。日本は開催国枠で20年東京五輪の出場権を持つ。五輪出場は1988年ソウル五輪以来32年ぶり5度目となる。今年1月の世界選手権で、強豪のスペインに善戦するも予選リーグは5戦全敗。順位決定戦でも敗れ、全24チーム中最下位だった。優勝はデンマーク。

日体大ハンドボール部

 1937(昭和12)年創部。87年4月に松井幸嗣氏が監督に就任した。初優勝した68年から5連覇するなど全日本学生選手権で23度の優勝を誇る。現部員は男子が56人、女子が34人。男女ともに代表選手を数多く輩出し、今年1月の世界選手権には男子19人中7人、昨年末のアジア選手権には女子20人中3人(いずれも日体大出)が選出された。

宮崎 大輔(みやざき・だいすけ)

 1981(昭和56)年6月6日生まれ、37歳。大分市出身。明野北小で競技を始める。明野中、大分国際情報高を経て、2000年に日体大に入学。スペイン留学を経験し、03年に大崎電気に加入。09年にはスペイン1部リーグのアルコベンダスに在籍した。10年に大崎電気に復帰し、日本リーグではフィールドゴールで歴代1位の930得点を誇る(18年3月時点)。19年3月に同社を退団。同年4月に日体大に再入学。175センチ、75キロ。

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