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【サンスポ×日体大】名門レスリング部の男女エースが’20東京目指し進化中

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食事をする(左から)湯元コーチ、サデュラエフ、日体大の三輪優翔、樋口、山口海輝。樋口は、ロシアのエースから成長のヒントをもらった (本人提供)  2020年東京五輪開幕まで、2日で600日。出身大学別最多62人の夏季五輪メダリストを輩出している日体大とコラボレーションした長期連載の第12回は、16年リオデジャネイロ五輪レスリング男子フリースタイル57キロ級銀メダルの樋口黎(22)=日体大助手=を特集する。今夏にロシアのダゲスタン共和国で行った人生初の海外武者修行を振り返った。女子62キロ級の新星、森川美和(19)=1年=は全日本選手権(20-23日、駒沢体育館)での優勝を誓った。 (取材構成・石井文敏)

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 東京五輪への新たな試みだった。樋口は今夏、日本から約8000キロ離れたロシアのダゲスタン共和国にいた。フリースタイルの聖地で、約3週間の武者修行に出た。

 「なりふり構わず、けんかのようにレスリングをやっているのが印象的だった。根っからの負けず嫌いだと分かった」

 2016年リオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得後、階級を変更。57キロから8キロ増の65キロ級に挑戦も、体格やパワーの差に苦しんだ。「リオ五輪の時と同じでは東京五輪(の出場)はない」。危機感を抱いた樋口は、08年北京五輪銀メダルの湯元健一コーチ(33)らと現地に渡った。

 ダゲスタン共和国の体育館では、屈強な体をした海外勢が汗を流していた。樋口がテーマに挙げたのは返し技。体が密着した状態での対応力に重点を置いた。「最初はポイントをとれずに、逆にとられた。徐々に適応できて粘り強さは身についたと思う」。

 運命的な出会いもあった。ロシアのエース、アブデュラシド・サデュラエフ(22)だ。リオ五輪86キロ級で金メダルを獲得し、世界王者として君臨するレスリング界の英雄だ。食事をする機会があり、英語で質問すると、こう返答があった。

 「トレーニングのためのトレーニングをしてはいけない」

 7月下旬の帰国後は日体大の学生を相手に、返し技の習得へ鍛錬を重ねた。並行して65キロ級で闘える体作りを行った。11月中旬のU23世界選手権(ルーマニア)では約2年ぶりの頂点に。片足タックルの武器に加え、絡んだ際の返し技を磨いたことで、幅が広がった。実に国際大会ではリオ五輪後、初の優勝だった。

 全日本選手権から東京五輪の代表選考が本格的にスタートする。10月の世界選手権覇者・乙黒(おとぐろ)拓斗(19)=山梨学院大=ら強豪勢がそろう65キロ級では“新参者”だが、決して臆することはない。

 「五輪への向き合い方を知っているのは僕の強み。本当の勝負はここから。一発勝負の大切さ、本番で力を出すためにしっかりと仕上げたい」

 将来は教師になる夢を持つ樋口。世界最高峰で学んだ技術を駆使し、日本一決定戦に挑む。

★リオ「銀」の悔しさ晴らすため…“マカロン王子”返上

 焼き菓子のマカロンが大好きで野菜嫌いだった樋口は、2年後の東京五輪での金メダルを目指し、食生活を改善した。

 「お菓子を食べる量がだいぶ減った。それだけで全然、違う。疲れにくくなった」

 2015年の全日本選抜選手権は、体重オーバーで失格。大会前日の計量で脱水症状を起こし、救急車で運ばれた。大会前にお菓子を食べ過ぎ、計量直前に迫られた急激な減量が原因だった。

 今では練習後などに日体大の横浜・健志台キャンパスから徒歩10分の場所にあるそば店に通う。「多いときには週5回くらい、そばを食べている。特に鴨せいろにはまっています」と笑った。かつて“マカロン王子”と呼ばれた姿はない。

★レスリング男子フリースタイル65キロ級の現状

 10月の世界選手権(ブダペスト)で五輪と世界選手権を通じて日本男子の史上最年少優勝(19歳10カ月)を成し遂げた乙黒(おとぐろ)拓斗(山梨学院大)が、樋口の最大のライバル。2016年リオデジャネイロ五輪代表の高谷惣亮(29)を兄にもつ高谷大地(24)=自衛隊、中村倫也(23)=博報堂DYスポーツ=ら強豪がそろう。

★ダゲスタン共和国

 ロシアにある共和国のひとつで、1991年に自治共和国から共和国となった。カスピ海の西側に位置し、アゼルバイジャン、ジョージアと国境を接する。首都はマハチカラ。面積は5万300平方キロ(日本の約7分の1)。人口は294万人(2013年)。公用語はロシア語、アヴァル語。主要産業は農業、漁業、畜産業、鉱業など。

樋口 黎(ひぐち・れい)という男

 ★生まれ 1996(平成8)年1月28日生まれ、22歳。大阪府吹田市出身。

 ★競技歴 4歳の時、地元・吹田市民教室で競技を始める。大阪・西陵中の時は大阪のリベラルキッズ教室に通う。茨城・霞ケ浦高では全国高校総体2連覇など数多くのタイトルを制覇。

 ★シニア大会 2014年に日体大体育学部へ進学し、15年全日本選手権(57キロ級)で初優勝。16年リオデジャネイロ五輪(同級)銀メダル、17年アジア選手権(61キロ級)3位。18年4月から同大助手に。同6月の全日本選抜選手権(65キロ級)2位、同11月のU23世界選手権優勝。

 ★得意技 片足タックルとアンクルホールド。

 ★日体大助手 今年4月から助手を務める。「授業の手伝いや研究室での雑務など。人間的にも成長して東京五輪を迎えられれば」。

 ★試合前に聴く曲 人気ロックバンド、ONE OK ROCK(ワンオクロック)。

 ★座右の銘 勇往邁進(ゆうおうまいしん)。意味は「自分の目標に向かって、恐れることなく前進する」。

 ★好物 あん肝ポン酢、板わさ、センマイ刺しなど。「酒はあまり飲めないけど、味覚が大人になってきた」。過去には1日9個もマカロンを食べることもあり、“マカロン王子”と呼ばれたが「今は月に1個」。

 ★名前の由来 「夜明け、未来を担っていく者」という黎明(れいめい)が由来。

 ★サイズ 1メートル62。

★森川、夢に向かって挑戦

 夢の舞台へ、覚悟を決めた。19歳の森川が階級を変え、東京五輪に挑むことを明かした。

 「(68キロ級から)階級を下げて62キロ級で闘います。未知の世界になるけど、挑戦し続けたい」

 東京五輪への選考が本格化する全日本選手権は新階級にエントリーした。スピードを武器としたタックルを最大限に生かすための変更だ。

 同級には世界選手権2連覇の川井梨紗子(24)=ジャパンビバレッジ=の妹、友香子(21)や世界選手権3位の源平彩南(22)=ともに至学館大=ら実力者がそろう。森川は11月のU23世界選手権(ルーマニア)の68キロ級で銀メダルに輝いた。「強い選手はいるけれど、東京五輪で金メダルを獲得するため」と決意を示した。

 日体大の練習に参加することもある五輪4連覇の伊調馨(34)=ALSOK=に胸を借りる。急成長の原動力だ。「全日本で結果を残すことが、今後(東京五輪)につながっていく」。新階級でのデビュー戦となる全日本選手権で、19歳のヒロイン候補が旋風を巻き起こす。

森川 美和(もりかわ・みわ)

 1999(平成11)年7月22日生まれ、19歳。静岡・沼津市出身。静浦小-沼津市立第三中を経て、東京・安部学院高へ。全国高校総体で3連覇を達成。今年4月に日体大体育学部に入学。世界ジュニア3位、U23世界選手権2位。1メートル64。

日体大レスリング部

 1951年創部。男子は横浜・健志台キャンパス、女子は東京・世田谷キャンパスを拠点とする。64年東京五輪のグレコローマンスタイル・フライ級で金メダルを獲得した花原勉を代表格に、グレコの強豪として知られる。主なOBには76年モントリオール五輪の男子フリースタイル52キロ級を制した高田裕司、16年リオデジャネイロ五輪男子グレコローマンスタイル59キロ級で銀メダルを獲得した太田忍、昨年の世界選手権同級覇者の文田健一郎らがいる。

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